理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 159
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骨・関節系理学療法
ジムボールを用いた脊柱可動性運動の介入時間の違いが脊柱彎曲角へ及ぼす影響
江口 淳子小原 謙一渡邉 進石田 弘
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抄録
【目的】 我々は第42回日本理学療法学術大会にて,ジムボールを用いた脊柱可動性運動の介入が脊柱彎曲角の増大に対して有効であることを報告した.しかしながら,その先行研究では介入時間の違いによる検討を行っていない.そこで本研究では,ジムボールを用いた脊柱可動性運動の介入時間の違いによる脊柱彎曲角への影響を検討することを目的とした.
【方法】 事前に本研究の内容を十分説明した上で協力を求め同意を得た,健常男性48名(年齢:21.5±2.4歳)を対象とし,介入時間60秒群12名,30秒群10名,15秒群15名,コントロール群11名の4群に無作為に分けた.脊柱彎曲角の計測には,脊柱計測分析器(インデックス社製)を用い,サンプリング周波数は150Hzとした.本研究では,体幹傾斜角,胸椎彎曲角,腰椎彎曲角,仙骨傾斜角を脊柱彎曲角の指標とした.脊柱可動性運動は,ボール(最大直径65cm)上にリラックスした状態で,臍の位置をボールの頂点に合わせるように腹這位をとらせ,肩・肘関節と股・膝関節は軽度屈曲位で,前腕と下腿を軽く床面に接地させ身体を安定させるものとした.はじめに介入前の体幹前屈時の脊柱彎曲角を脊柱計測分析器にて計測した.次に60,30,15秒群はボール上で,決められた時間だけ脊柱可動性運動を行った.コントロール群は静止立位を15秒間保持させた.それらの後,再び体幹前屈時の脊柱彎曲角を計測した.統計学的解析には,各群での介入前後の値を比較するために対応のあるt検定を用いた.さらに,介入時間による差を検討するために,一元配置分散分析を用いて,脊柱彎曲角の変化率(介入後/介入前×100)を群間で比較した.いずれも危険率5%未満をもって有意とした.
【結果】 ( )内の左に介入前,右に介入後の値を示す.60秒群では体幹傾斜角(106.1±14.8,109.9±13.7)と仙骨傾斜角(59.7±11.5,64.9±12.9)の介入後の値が介入前と比較して有意に大きくなった.30秒群では体幹傾斜角(115.9±10.4,118.3±10.8)と仙骨傾斜角(70.4±5.5,73.3±8.2)の介入後の値が介入前と比較して有意に大きくなった.15秒群では体幹傾斜角(112.5±10.0,115.2±9.8)と胸椎彎曲角(52.3±11.9,56.3±11.2),仙骨傾斜角(62.2±11.6,65.3±11.8)の介入後の値が介入前と比較して有意に大きくなった.コントロール群には有意差はなかった.さらに60,30,15秒群の変化率の群間比較では,いずれの指標においても有意差はなかった.
【考察】 ジムボールを用いた脊柱可動性運動の介入は,脊柱彎曲角を増加させるのに有効な手段であった.その介入は主に仙骨傾斜角を増大させ,そのことにより体幹傾斜角が増大することを示した.また60,30,15秒群に有意差がなかったことから,同運動は15秒間行うことで十分効果があることが明らかになった.
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© 2008 日本理学療法士協会
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