抄録
【目的】近年体幹深部の筋が腰痛防止に重要な役割を果たしているとする研究成果が多く報告されている.体幹深部筋エクササイズ方法の一つとしてはバルーンを用いたバランスエクササイズがある.しかしバルーンエクササイズは適当な広さを必要とし,転倒の危険性が高いことから,バランス機能が低下した対象者には導入しにくい.またエクササイズがどの程度の運動負荷量であるのか十分に検討されていない.本研究では小型で転倒の危険性の少ない不安定板を用いたエクササイズが,バルーン同様の運動負荷が得られるか検討した.同時に座位バランスエクササイズの運動負荷量を呼気ガス分析により測定した.
【方法】対象者は健常成人10名(男性6名,女性4名,平均年齢22.2歳(21-33))とした.なお本研究は首都大学東京倫理審査委員会の承認を得た.対象者には実験内容を説明し同意を得た.運動時の酸素摂取量[ml/kg/min]には呼吸代謝測定装置(AE-300S,ミナト医科学)を使用しbreath-by-breathで測定した.実験手順は3分間の安静座位の後,エクササイズA,エクササイズB,エクササイズCを各3分間行った.各エクササイズ間に2分のインターバルを取った.エクササイズAは不安定板上座位姿勢の保持とした.エクササイズBCは座位姿勢で一方の上肢と反対側の下肢を挙上させバランスを保つ課題を左右交互に行なわせた.BCではバルーンと不安定板をそれぞれ使用し,使用順序はランダムとした.なお不安定板は,直径250mm,高さ70mmの不安定板(Pelvic board:ペアサポート製)を使用した.統計処理は酸素消費量を目的変数とし,エクササイズを説明変数とした反復測定一元配置およびsheffeによる多重比較を行った.有意水準は5%とした.
【結果】不安定板上座位姿勢保持における酸素消費量は平均5.36 ml/kg/min(sd0.66)であった.これに対してバルーンを用いた肢挙上エクササイズは平均10.61(2.26),不安定板を用いた肢挙上エクササイズは平均9.61(2.30)であった.分散分析の結果有意差が示された.多重比較では不安定板上座位と2種の肢挙上エクササイズ間に有意差が示されたが,バルーン使用と不安定板使用の間に差は示されなかった.なお消費エネルギーは不安定板上座位が平均1.52 kcal/min(0.29)で,肢挙上エクササイズのうちバルーン使用は3.00(0.74),不安定板使用は2.71(0.71)であった.
【考察】今回の結果から,肢挙上エクササイズではバルーン使用と同程度の運動負荷が小型不安定板でも得られることが示唆された.以上からバルーンエクササイズに代わる方法として小型不安定板が使用可能であると考えられた.なお同エクササイズ中の体幹筋活動についてはMRIを用いて別途解析を進めておいる.