理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 168
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骨・関節系理学療法
幼児の浮き趾出現と足部形態の関連(第1報)
荒木 智子須永 康代森山 英樹鈴木 陽介井上 和久久保田 章仁増田 正森田 定雄鳥居 俊
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キーワード: 足部形態, 浮き趾, 発育発達
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抄録
【目的】幼児の足部形態は成長の途上にあり,様々な形態がみられる。幼児期は運動発達に伴い,筋や骨格の発育が進み,足部形態にとって貴重な時期である。しかしその一方で,足趾が床面に完全に接地できていない「浮き趾」が散見される。原田は幼児における浮き趾の出現率が1980年はわずかだったのに対し2000年は50%を超えたと報告している。「浮き趾」の原因は,重心位置の後退,歩行時の重心移動や緩い履物などがあげられている。そこで,本研究では幼児期の浮き趾と足長,足幅,アーチ高率の関連を検討した。
【方法】対象は健常な幼児104名で,3歳から5歳までの男女児であった。被験者および保護者に充分な説明と書面による同意を得たのちに足長,足幅,舟状骨高を測定し,接地足裏画像を抽出した。測定は全て両側荷重位で実施し,足長,足幅はスライディングスケールで,舟状骨高は垂直定規を用いて測定をした。舟状骨高は全足長で除し,アーチ高率としてアーチ構造の発達状況の指標とした。接地足裏画像はピドスコープにて自然立位で抽出した。接地足裏画像は恒屋の方法に従い,足趾接地状況を6段階(タイプ1~6)に分類した。
【結果】足長・足幅・舟状骨高は男女とも年齢とともに増加した。足趾接地状況は,6段階のうち両足の全ての足趾が接地している良好な状態(タイプ1)であったのは男児6名(11.5%),女児7名(13.4%)で全体の12.5%にとどまった。男児では片足のみの浮き趾(タイプ3)が19名(36.5%)にみられ,次いでいずれかの足趾の部分接地(タイプ2)が15名(28.8%)にみられた。女児で最も多く見られたのが両足の第5趾の浮き趾(タイプ4)で17名(32.9%)にみられ,次いで片足のみの浮き趾(タイプ3)が16名(30.7%)にみられた。年齢別では全趾接地している状態(タイプ1)は3歳児で6名(19.3%),4歳児で4名(10.8%),5歳児では3名(8.3%)で浮き趾の出現率が増加していた。また,浮き趾の出現の分類とアーチ高率,足長,足幅には有意な相関はみとめられなかった。
【考察】浮き趾としての足部形態の関与,年齢での変化に有意な関連はみられなかった。しかし,浮き趾は幼児に高率に出現していた。原田や内田によれば,浮き趾の原因の一つに重心位置が後方にあることを報告している。また大塚は浮き趾の原因として幼児の歩行の重心移動経路が第5趾側を通過しないことを報告している。これらに従えば,年齢とともに浮き趾は減少すると考えられ,本研究の結果と矛盾した。今後は高率に出現する浮き趾の原因について,運動習慣や生活様式からの検討が必要と考えられた。
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© 2008 日本理学療法士協会
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