理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 169
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骨・関節系理学療法
腰仙椎アライメントからみた椎間板ヘルニアと椎間関節症の比較
城 由起子青木 一治友田 淳雄上原 徹稲田 充
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抄録
【はじめに】脊柱アライメント(以下、アライメント)の変化は腰痛発症と関係があるという考えの下、健常者から腰痛既往者に至るアライメントについて検討してきた。そこで今回はこれまでの研究を基に、腰椎椎間板ヘルニア(以下、LHNP)と腰椎椎間関節症(以下、LFS)について検討した。これらの疾患は時に類似する症状を呈することがあるが、治療法が異なるため鑑別が重要である。この鑑別の一助として、腰仙椎部のX線像から疾患特異的アライメントに関する若干の知見を得たので報告する。

【対象】腰痛を主症状とし、他覚所見および画像所見よりLHNPと診断し、腰椎伸展運動を行った外来患者21名(男性18名、女性3名)と、LFSと診断し、腰椎屈曲運動を行った外来患者23名(男性8名、女性15名)を対象とした。

【方法】アライメントの測定には腰椎側面X線像用い、安楽立位(以下、立位)、臥位最大屈曲(以下、屈曲位)および最大伸展(以下、伸展位)時のtotal lumbar angle(L1からS1、以下、T-L angle)を計測した。また、立位からsacro-horizontal angle(以下、S-H angle)とposterior projection(以下、P-P)を計測した。腰椎屈曲可動域と伸展可動域は、立位を基準に屈曲位と伸展位までのT-L angleで算出した。計測値は前彎角を正、後彎角を負、P-P背側を正、腹側を負で表記した。統計学的分析は、差の検定にはT検定を、各角度の関係にはピアソンの相関係数を使用し、有意水準を5%とした。

【結果】
1.アライメント:立位T-L angleはLHNP37.5±14.5度、LFS46.7±11.1度とLFSが有意に前彎位を呈していた。S-H angleはLFSの方が大きい傾向にあるものの有意差は認めなかった。各角度の関係は、両群ともT-L angleが大きいほどS-H angleも大きいという正の相関を認めた。またLHNPでは、T-L angleとP-Pで正の相関を認めたが、LFSでは認めなかった。
2.可動性:LHNPではLFSに比べ屈曲位でもT-L angleは減少していなかったのに対し、伸展位では逆にLFSの方がT-L angleが大きい傾向にあった。屈曲可動域はLHNP27.2±16.8度、LFS35.6±16.4度とLHNPで有意に減少していたが、伸展可動域は有意差を認めなかった。可動性とアライメントの関係については、両群間で特徴的な差はなかった。

【考察】LHNPは立位T-L angle、屈曲可動域ともに小さく、逆にLFSは立位T-L angle、屈曲可動域ともに大きいという特徴を示した。この特徴から逸脱する者については、P-Pとの関係をみることで疾患の特徴がより明確となり、腰仙椎の側面X線像は疾患の鑑別に使用できると考えられた。今回P-Pとの関係が示されたことから、今後は重心について検討する必要があると考えられた。
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© 2008 日本理学療法士協会
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