理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 170
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骨・関節系理学療法
Chiari法を施行したポリオ罹患患者の理学療法
橋本 貴幸村野 勇中安 健大西 弓恵小林 公子大山 朋彦秋田 哲矢口 春木瀧原 純柏 俊一野原 希小手 彰太鎌田 涼子片岡 夕子岡田 恒夫
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キーワード: Chiari法, ポリオ, 理学療法
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抄録
【はじめに】症例は、ポリオによる左下肢麻痺を呈し、骨盤の傾き、側彎の原因により右大腿骨頭の被覆が減少し二次性変形性股関節症を発症し、他院にてChiari骨盤骨切り術が施行された。退院後当院にて理学療法(以下PT)を継続したので経過および理学療法を中心に考察を含め報告する。
【症例紹介】60歳代後半、女性。現病歴は、平成17年3月24日右下肢運動制限と疼痛のため、他院にてChiari骨盤骨切り術を施行した。転居に伴い7月12日当院紹介受診され、週2回の外来PTを開始した。
【初期評価】下肢長は右2cm短縮の脚長差。周径は、大腿10cm:右40cm、左35.5cm。下腿最大:右36.5cm、左28.5cm。ROM(右/左):股関節屈曲90/120度、伸展-10/-10度、内転-5/-5度、膝関節伸展-10/-10度、屈曲100/155度、足関節背屈15/10度、腰椎後彎可動性テスト右110度。MMT:右下肢全体4、股関節外転3、左下肢:股関節屈曲、伸展、外転3-、内転、膝関節伸展0足関節底背屈3-。疼痛は、歩行時に腰痛、右股関節外側部、膝内側部、他動伸張痛は膝関節屈曲時伸展筋。歩行:両松葉杖にて両上肢にもたれ著明な腰椎前彎位で歩行、耐久性20m。
【経過】平成17年7月12日PT開始、8月2日全荷重歩行開始、8月20日左膝関節伸展位固定装具および補高靴完成、10月4日T字杖歩行および独歩が少しずつ安定したが、右腰部、右股関節痛の出現と緩解が繰り返され治療は長期化。外来PT2年経過以降の現在、疼痛、歩容の改善と安定した移動能力を得た。
【理学療法】1.装具療法(左膝関節伸展位固定)2.補高(右下肢)3.骨盤後傾・腰椎後彎可動域4.股関節前方・外側支持組織の伸張5.筋力強化6.歩行
【考察】 Chiari骨盤骨切り術の適応年齢は、40歳代でその長期経過は変形性股関節症進行の予防として25年有効期限があると言われ、本症例の適応年齢は遅いものの理学療法によりTHAを回避できるとも考えられた。また、ポストポリオ症候群では、過用と廃用の混在が筋力低下の機序と言われておりNRHポリオ後筋分類と運動処方ガイドラインではクラス3、4で過用に注意する必要があった。本症例は、ポリオによる左下肢麻痺のため長年骨盤前傾、腰椎前彎姿勢による安定化と右下肢を健側として酷使したと考えられた。そのため右変形性股関節症の発症と術後疼痛、機能障害により歩行障害が悪化したと推察した。理学療法は、左下肢麻痺側の膝関節伸展固定装具の作成と右下肢2cmの補高を施行し腰椎前彎を是正した。その後、装具なし歩行も可能となるが右下肢の疼痛出現と緩解が繰り返されたため、外側支持機構の筋緊張や短縮は骨頭の亜脱臼方向へのストレスと考え内転方向へストレッチングを施行し股関節骨頭内方化を図った。更に、腰椎、骨盤後傾可動性の低下による股関節運動制限、腰椎、骨盤前彎ストレスを助長していると考えアプローチした結果、疼痛、歩容は改善し現在安定した経過を得た。
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© 2008 日本理学療法士協会
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