抄録
【目的】高齢者を対象に腰痛予防の観点から腰背部筋持久力訓練を実施し、その効果を筋持久力、QOLをから検討することおよび高齢者のTrunk Holding Testの保持時間に影響を与える因子を、属性、筋電図学的な筋持久力、QOLから検討することである。
【方法】対象は本院に通う25名で、65-85歳の地域で独立した生活を営む高齢者(72.2±4.4歳)であった。対象者は訓練群(EXE群)とコントロール群(CON群)の2群に分類した。対象者には実験について十分な説明を行い同意を得た。また本院の倫理委員会の許可を得た。評価項目は、対象者の属性、体幹背部筋持久力、QOLとした。対象者の属性はアンケート用紙を使用し収集した。体幹背部の筋持久力は、Trunk Holding Testの保持時間(Time)とその際の腰部多裂筋の筋疲労を筋電図にて計測した。筋電図の測定と解析にはキッセイコムテック社製筋電計を使用した。電極の貼付部位は腰部多裂筋とし測定時間は30秒間とした。そしてInitial Median Frequency(IMF)、Median Frequency Slope(MF‐Slope)を算出した。QOL評価にはMOS Short-Form 36-Item Health Survey(SF-36)を使用した。訓練は、ストレッチ、体幹背部筋持久力訓練などから構成され、8週間実施した。初期2群間比較は対応のあるt検定を使用し比較した。訓練効果はt検定を使用し群内・群間にて比較した。Timeと各測定項目との相関はピアソンの相関係数を使用し検討した。それぞれ有意水準は5%未満とした(p<0.05)。
【結果】各測定項目における初期2群間の有意な差はみられなかった。両群とも8週間後におけるIMF、MF-Slopeの有意差はみられなかった。TimeはEXE群において8週間後に有意に増加し (183.27±78.34%)、2群間の有意差も確認されたが、CON群では有意な変化はなかった。QOLでは、EXE群で「身体機能」の有意な減少、「体の痛み」、「全体的健康感」、「活力」の有意な増加が見られた。CON群では「身体機能」と「体の痛み」に有意な減少が見られた。またTimeとSF36の「日常役割機能(身体)」と「体の痛み」の間に有意な正の相関がみられ、筋電図学的筋持久力や属性との相関はみられなかった。
【考察】筋電図学的筋持久力の向上はなかったことから、筋組成に対する訓練効果は少なかったと判断できる。筋持久力の向上にはより長期間の訓練が必要と考えられる。QOLの改善は先行研究を支持する結果であり、これは機能改善だけでなく被験者間の交流などが影響していたと考える。また高齢者においては、TimeはSF36の下位項目など心理面を反映し、筋電図学的筋持久力を反映しない事が示唆された。