理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 780
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内部障害系理学療法
呼吸器疾患患者におけるPeak Cough Flow測定の信頼性についての検討
藤井 宏匡相田 利雄石原 英樹田平 一行堀江 淳高折 和男
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抄録
【はじめに】
咳嗽力が低下することで気道内分泌物の喀出が困難となり,肺炎や無気肺などの感染症を引き起こし,急性増悪を繰り返す患者が少なくない.よって気道内分泌物を喀出させる「咳嗽力」は,感染を予防する上で大変重要な要素であるといえる.咳嗽力については,神経-筋疾患の領域で咳嗽時最大呼気流速(Peak Cough Flow; PCF)を咳嗽力の指標として測定し,報告もされている.しかし,呼吸器疾患患者におけるPCFの報告は,ほとんど見られない.
そこで今回は,呼吸器疾患患者を対象にPCFを測定し,その特徴および信頼性について検討したので報告する.
【対象】
当センターにおいて呼吸理学療法を実施しており,なおかつ病状が安定期にある呼吸器疾患患者95名(男性76名,女性19名,平均年齢71.47±7.45歳)を対象とした.疾患の内訳は,COPD 75名,間質性肺炎 7名,肺結核後遺症 7名,その他6名であった.なお,対象者には研究について説明し同意を得た.
【方法】
PCFの測定は,チェスト社製品ピークフローメーター「アセス」とミナト医科学社製「エアーシールマスク」を,リークのないように接続したものを用いた.測定肢位は端坐位とし,咳嗽時に呼気がもれないよう両手でフェイスマスクを持たせ,最大吸気位から努力性に最大の咳嗽を行わせた.測定回数は3回とし,最大値を採用した.同一検者内信頼性の検討は,1回目のPCF測定後,数日以内に2回目のPCFを測定した.検者間信頼性の検討については,同一患者に対して異なる検者が同日にPCFを測定した.統計学的手法は,級内相関係数(Intraclass correlation coefficients; ICC)と対応のあるt検定を用い,有意水準は5%未満とした.
【結果と考察】
PCFは,平均で228.74±113.01 L/minであり,神経-筋疾患領域で去痰不全の目安とされる270 L/minよりも低い数値であった.PCF測定の結果, 同一検者内信頼性はICC(1,1)で0.95となり,非常に高い信頼性が得られた.また,同一検者内1回目(228.74±113.01 L/min)と2回目(233.53±112.08 L/min)との間には,有意差を認めなかった. 検者間信頼性については,ICC(2,1)で0.95となり,こちらも同一検者内同様に非常に高い信頼性が得られた.検者間のPCF測定値は,(228.74±113.01 L/min)と(231.79±108.78 L/min)で,こちらも有意差を認めなかった.以上の結果から,呼吸器疾患患者におけるPCF測定の信頼性は,同一検者内・検者間ともに高い信頼性が得られ,呼吸器疾患患者においてもPCFが咳嗽力の指標として活用できるものであると考えられた.

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© 2008 日本理学療法士協会
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