理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1226
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内部障害系理学療法
肺癌摘出術に対する当院の理学療法の現状
後藤 総介田岡 久嗣岡本 敦岩田 幸恵田中 武一
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抄録
【目的】近年肺癌に対する手術として胸腔鏡下胸腔内切除術(VATS)が発達し,より低侵襲となった.それにより術後合併症が開胸手術に比べ減少したという報告が多い.しかし,依然として術後合併症が生じるのも事実である.そのため,手術前後から理学療法(PT)が実施されている.そこで,今回当院において肺癌摘出術を施行した患者のうち,VATS群と開胸群,また術前からのPT実施群と非実施群に分けて術後合併症の発生と術後在院日数などを比較し,当院の現状について報告する.

【対象および方法】当院2004年1月から2005年12月までにおいて肺癌摘出術を施行した151例(VATS群74例,開胸群78例)を後方視的に調査した.調査項目は1)年齢,2)手術様式,3)皮膚切開範囲,4)術後在院日数,5)術後呼吸器合併症,6)既往,7)術前肺機能検査数値[FEV1.0(l)・FEV1.0%(%)],8)術後から歩行開始までの日数,9)理学療法実施の有無の9項目とした.開胸群とVATS群の各項目を対応のないt検定にて,PT実施の有無と術後呼吸器合併症の有無についてx2検定を用いて比較検討した.

【結果】VATS群と開胸群で年齢,術前FEV1.0・FEV1.0%に有意差はなかった.また,PT実施件数もVATS群7例,開胸群11例であり有意差はなかった.一方,VATS群は開胸群に比べ皮膚切開(VATS群6.72±2.4cm,開胸群16.64±5.9cm)は有意に狭く(p<0.01),術後在院日数(VATS群9.30±3.1日,開胸群11.47±4.1日)は短かった(p<0.01).歩行開始までの日数はほぼ全例で術後翌日であった.呼吸器合併症の発生件数はVATS群5例,開胸群13例であり有意差はなかったがVATS群において呼吸器合併症の発生が少ない傾向であった(p=0.058).

【考察】当院は2004年からVATSを利用した肺摘出術件数が増加している.VATSは開胸に比べ低侵襲であり術後在院日数を減少させると言われている.これは当院においても同様であり,VATS群において呼吸器合併症が少ない傾向であった.また,当院においてPT実施の明確な基準はなく,医師が全身状態を考慮しハイリスク患者を選択的に依頼している.そのため,PTの実施件数は全体として少ない.しかし,選択されたハイリスク患者に対してPT実施することにより,効率的に合併症を予防できた可能性が示唆された.今後は,VATSが増加する上で手術の特徴を理解し,対応する必要があると思われる.

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© 2008 日本理学療法士協会
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