理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1679
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内部障害系理学療法
介護予防事業における呼吸法教室の効果
2年間の効果検証
滝沢 真実曽根 理
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抄録
【目的】
平成17年度より某町での介護予防事業における呼吸法教室に関わる機会を得、第42回理学療法学術大会にて6ヶ月間の効果検証を行った。今回は呼吸法教室の長期的効果の検証を行うこと、今後のプログラムの見直しを行うことを目的に、2年間のデータをまとめ、参加者のQOL、呼吸機能、身体機能の変化分析と各機能の関連を検討した。
【対象と方法】
対象は呼吸法教室に2年間継続して参加された7名(男性2名、女性5名、平均年齢73.3±5.3歳)。呼吸法教室は保健師2名と理学療法士1名にて、週1回90分間実施。訓練内容は呼吸筋ストレッチと筋力訓練、下肢筋力訓練、バランス訓練、運動負荷訓練、呼吸法指導を行った。訓練は6ヶ月を1期間とし、その期間ごとに検査測定を実施。測定項目は呼吸機能検査、右膝伸展筋力、シャトルウォーキングテスト(以下SWT)、健康関連QOL(以下SF-36)とした。SF-36は、8項目下位尺度を得点化後、身体的健康度(以下PCS)と精神的健康度(以下MCS)を算出。2年間の効果検証のため、平成17年9月測定値(以下前値)と平成19年9月測定値(以下後値)で比較検討。統計処理は、Wilcoxonの符号付順位検定、Spearmanの順位相関検定を行い、有意水準は5%未満とした。
【結果】
前値と後値の平均値を比較した結果、PCSは45.7±8.2から43.8±7.1へ、MCSは48.2±7.2から54.4±8.7へと変化が見られたが、有意な差は認めなかった。下位尺度でも有意な差は認めなかったが、身体機能は70.0±18.0から64.3±21.9と低下の傾向(p=0.084)、心の健康は57.1±18.7から74.3±23.4と改善の傾向(p=0.075)を認めた。この値を70~80歳代の全国平均値と比較したところ、前値はPCSのみが全国平均以上であったが、後値ではPCS、MCS、心の健康の3項目が全国平均以上となった。身体運動機能に関しては、SWTは25.7±5.6シャトルから25.1±5.9シャトル、右膝伸展筋力も177.7±63.6Nから164.0±90.5Nと、有意な差は認めなかった。呼吸機能も有意な差は認めなかったが、努力性肺活量(以下FVC)とFVC75%流量(V75)で低下の傾向(p=0.063)が認められた。また変化率を見てみると、最大呼気流量(以下PFR)が76.8±31.0%と最も低下が認められた。QOLと各機能の関連を検討したが、有意な相関は認めなかった。
【考察】
2年間の訓練によりQOL、各機能とも有意な向上は見られなかったが維持は図れたと考える。MCSや心の健康が全国平均以上となった点から、教室に参加することが外出や交流の機会となり精神面向上につながった可能性も示唆された。しかしFVC、V75、PFRでは低下傾向があるため、今後は呼気筋力訓練や運動負荷訓練を重点的に行い、運動耐容能の向上を図りながら、身体機能のQOL向上につなげていきたいと考える。
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© 2008 日本理学療法士協会
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