理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 735
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生活環境支援系理学療法
地域住民参加による介護予防事業の効果について
淵岡 聡樋口 由美逢坂 伸子奥田 邦晴林 義孝
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キーワード: 介護予防, 体操, 住民参加
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抄録
【目的】大阪府大東市では介護予防事業の一環として住民主体の体操教室(以下,教室)の普及を図っている。この教室の特徴は,地域住民を対象に介護予防に関する講習会(介護予防サポーター養成講座)を開催し,修了者が介護予防サポーターとして主体的に介護予防事業に参画するところにある。我々は教室参加による効果を判定し,地域に根ざした介護予防事業のあり方について若干の知見を得たので報告する。
【対象・方法】教室は平成18年1月~3月に市内10カ所のモデル地区で10~12回開催された。教室で指導される体操は身体機能に応じて立位・座位・臥位が選択でき,特別な道具を使用することなく,ストレッチングと体重移動を伴う全身運動に上肢・体幹の運動を組み合わせてリズミカルに行うもので,市が独自に開発した。
対象者は調査の同意を得た教室参加者(1カ所あたり10~15名)とし,教室開始時と終了時に体力テストとアンケート調査を実施した。調査項目は基本項目(年齢,性別等),身体機能(握力,長座位体前屈,開眼および閉眼時の片脚立位時間,functional reach [FR],timed up & go test,最大一歩長,足指握力),アンケート調査(老研式活動能力指標,自己効力尺度,SF36,簡易抑うつ尺度,教室内容および指導者に対する満足度等)とした。教室前後の比較には対応のあるt検定を用い,有意水準は5%未満とした。なお,アンケートの提出は指導者への気兼ね等を避けるため,我々に直接封書で郵送することとした。
【結果・考察】参加者148名(女110名,男38名)のうち,教室開始時・終了時ともにほぼ欠損なくデータ収集できた女性42名(年齢60~85歳,平均70.4±5.1歳)を解析対象とした。教室前後の調査項目の平均値は,身体機能では全ての項目において向上傾向を示し,最大一歩長,開眼・閉眼片脚立位時間,FR,足指握力が有意に向上した。終了時の調査では「体が軽くなった,歩いても疲れにくくなった」等の回答が多く見られ,主観的にも「動きやすさ」が向上していた。アンケート調査では全ての項目において向上傾向を示した。老研式活動能力指標は教室前後とも12.4点,自己効力尺度は36.3点→36.4点であり,対象者は当初より十分高い総合的ADL能力と自己効力感を有していた。SF36では全ての下位項目で向上傾向を示し,全体的幸福感において有意な向上を認めた。教室に関する設問では通いやすさ,楽しさ,指導者の指導のわかりやすさ,指導者の魅力等について90%以上が肯定的回答であり,参加者の満足度は非常に高かったと言える。
【まとめ】
・身体能力の高い高齢者に対して地域住民ボランティアによる体操教室を実施することにより,身体機能と健康関連QOLが向上した。
・地域住民が介護予防サポーターとして主体的に事業に参画することで,地域密着型の事業展開や継続が可能となり,介護予防に対する住民の意識向上にも有効であると考えられた。
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© 2008 日本理学療法士協会
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