抄録
【目的】青森県下の訪問リハビリテーション(訪問リハ)について、2004-2005年度、県理学療法士会所属のPT及び県作業療法士会所属のOTを対象に意識調査を実施した結果、その必要性は高いものの、マンパワーや他職種の周知が不十分であり、訪問リハ開始及び拡充の阻害因子となっていた(千葉ら,2006)。2006年度の医療・介護保険制度改訂で、訪問リハでは一部規制緩和や退院後早期の加算増となり、病院でのリハビリから在宅への橋渡しの役割は増すと考える。本研究の目的は、制度改訂の影響を踏まえ訪問リハの現状を明らかにすることである。
【方法】2007年度に県士会所属のPTが勤務する病院・診療所、介護老人保健施設、訪問看護ステーション96施設を対象に、郵送紙法によるアンケート調査を実施した。調査内容は、 1)制度改訂後の訪問リハ実施状況、2)マンパワーに関する状況、3)医師・ケアマネージャーへの訪問リハ周知のために重要な因子、とした。
【結果】51施設(53.1%)から回答を得た。1)2006年度以降20施設(39.2%)が訪問リハを実施している。うち、介護保険利用件数が医療保険利用件数より多かったのが15施設であった。現在訪問リハを実施していない施設で訪問リハの要請が増えている場合があり、回答のあった29施設中、医師からは6施設、ケアマネージャーからは9施設で要請が増加していた。2)マンパワー不足の解決策として、81回答中「新卒者増や求人増による人員充足」(23.5%)、「訪問リハ利用の円滑な循環(ゴール到達による終了、新規利用者の開始)」(17.3%)、「地域のニーズについての調査」(16.0%)の順で多かった(重複回答あり)。3)訪問リハの周知・理解を深めるために重要な因子は、医師に対しての48回答中、「効果の提示」(35.4%)、「サービスの存在のアピール」(27.1%)、「対象者からのニーズの増加」(18.8%)であった。ケアマネージャーに対しての55回答中「効果の提示」(27.3%)、「サービスの存在のアピール」(20.0%)、「情報の集約」及び「対象者からのニーズの増加」(各16.4%)の順で多かった(重複回答あり)。
【考察】得られた結果から、介護保険利用の訪問リハの比重が高くなっており、介護保険の知識や、関係他職種との連携はより重要になっていると考える。人員が十分でない県下の現状では、設定したゴールに到達できる利用者については理解を得て終了とし、新規利用者に訪問リハを提供できる状況を整えることが必要であると考えた。訪問リハ提供の開始と終了について情報を集約し、リハ職・他職種間で共有することにより、相互理解と提供拡充につながるのではないかと考える。