抄録
【目的】平成17年度より当大学では, 病院, 老人保健施設, 特別養護老人ホーム, 介護保険系在宅サービスなどの大学関連施設にて, interprofessional educationの一環として「関連職種連携実習」を開始した. 今回, 介護保険サービスにおける「関連職種連携実習」を実施し, その特徴と課題について報告する.
【方法】実習地である総合在宅ケアセンターは, 通所サービス, 訪問サービス, 居宅介護支援事業所の計5サービスからなる, 介護保険系在宅サービスの複合施設である. 実習の対象学生は, 2学部8学科(理学療法, 看護, 作業療法, 言語聴覚, 視機能療法, 放射線・情報科学, 医療経営管理, 医療福祉)から各1名, 計8名の学部4年生で, 事前実習を含めて10日間の実習を行った. 同実習は, 1) 各職種の機能と役割の理解, 2) 自職種の果たすべき役割の明確化, 3) 連携についての理解とチームアプローチの実践, を目標としている. さらに介護保険サービスでの実習として, 4) 介護保険制度と各介護保険サービスについての理解, 5) 介護保険サービスにおける, 多職種・多サービス下のチーム・アプローチの体験, という目標を加えた. 主な実習内容は, 1) 実際の対象者に対する「総合サービス計画」の立案, 2) 他職種の業務の見学・実践, である. 1) に関しては, 通所リハビリテーション利用者1名を対象者として, 各学生が情報収集及び実際の評価を実施し, 学生間のカンファレンスを通じて, 「総合サービス計画」を立案, 発表した. 2) に関しては, 他訪問サービス, 介護支援専門員に同行, 見学した. 実習に際しては, 対象者である利用者に, 実習及び実習内容の発表に関して説明し, その同意を得た. 学生は, 「総合サービス計画」と「関連職種連携について」の課題レポートの提出及び, 出席状況, 学習態度等により評価した. また, 実習達成度の把握の補助を目的として, 実習終了後に, 実習に対するアンケート調査を実施した.
【結果】学生は, まず国際生活機能分類(ICF)の概念を利用して, 自・他職種の専門性を把握した. さらに, 対象者に対する「総合サービス計画」を立案, 発表した. 実習後に実施したアンケート結果から, 我々が挙げた実習の目標は達成されていることがわかった.
【考察】サービス担当者会議など, 多職種・多サービス下のチームアプローチは, 介護保険系在宅サービスの日常業務である. また介護保険系在宅サービスは, 組織が小さく情報の交換・共有が比較的容易であり, 介護職の職域が広く医療職に偏らないという特徴を有している. 以上のことから, 在宅サービスは, 実践的な関連職種連携実習を実施する場としての多くの特徴を有していると考えられる.