抄録
【目的】当校リハビリテーション学科の卒業生は1200人を超え、卒業生の就職先も近年少人数の職場や経験年数の浅い理学療法士が多い職場が増えつつある。そのような職場では、担当症例の評価・分析・治療方針について十分に助言を受けることが難しく、勤務終了後や休日に学校へ相談に訪れる卒業生も増えている。今回、担当症例の評価、治療方針等について発表し、幅広い経験層から助言を受け今後の治療に還元すること、また経験豊富な理学療法士は後輩に提言することで指導方法を学ぶことを目的とし、当校と同リハビリテーション学科同窓会の共催で卒後教育の一環として症例検討研修会を行った。今回の研究の目的は、症例検討研修会を紹介すること、参加者に対するアンケート調査の結果をもとに研修会の意義を検討することである。
【方法】当校の卒業生と臨床実習指導者を対象として参加者を募った。研修会は2日間とし、1日目は動作分析と研究方法論の2題の講演会、2日目は一般演題発表を行い、参加者に対してアンケート調査を実施した。なお一般演題の発表時間は20分、質疑応答時間は15分とした。アンケート内容は参加者の属性、講演会、研修会についての感想、プレゼンテーションについての感想、講演会のテーマの希望とした。
【結果】演題発表は13題、参加者は80名、アンケート回収率は69%であった。参加者の約60%は経験年数1~5年であった。講演会、研修会の感想は70%から80%が「よい」であった。新人の参加者には「質疑の時間において先輩の意見を始めに聞くと、発言しにくい」という意見もあった。プレゼンテーションについては「時間にゆとりがあり、十分な討論ができた」「動画は内容がよく伝わってよい」という意見が多かった。次年度以降の講演会のテーマの希望は、経験年数5年目までの卒業生では基礎的知識についての内容が多く、経験年数6年以降の卒業生では臨床における応用的な内容が多かった。全体としては研修会を継続して行ってほしいという意見が多かった。
【考察】今回の研修会の特徴として、発表と質疑応答の時間に余裕を持ったこと、動画を用いた発表にしたことは肯定的な感想が多く、充実した討議が出来たと考える。臨床経験の浅い卒業生の参加率が高く、研修会に対する意欲の高さが伺われたものの、その反面討論の参加には消極的にならざるを得なかったようである。今後は新人が積極的に質疑や討論に参加できる形態を検討すること及び助言を与える立場の経験豊富な卒業生の参加を促すことが課題となるが、この症例検討研修会への期待度は高く、継続的開催の意義は大きいと考える。