抄録
【はじめに】近年では創造的思考、あるいは問題解決法の技法を理学療法教育へ取り込み、教育の質向上に活用することが行われている。この創造的思考法の一つとしてチェックリスト法がある。チェックリスト法は強制発想法の一つであり、自由発想がなかなか困難な場合に有用と考えられる。また、昨今の臨床実習では知識・技術の実習展開に伴うマナーや態度、一般常識等の資質、あるいは情意レベルの問題の克服が課題となっている。これらの課題を実習に出る前に学生へどのようにマスターさせるか。チェックリスト法を用いた教育展開を試みたので報告する。
【対象】本校、応用理学療法学科1年の学生31名を対象とした。
【方法】チェックリストはビジネスマナー等の文献から、頭髪(5項目)、顔(9項目)、服装(8項目)、手指(8項目)、持ち物(6項目)、におい(8項目)、気力・体力(4項目)の7大項目48小項目を抜粋し作成した。回答は理学療法士として改善の必要性があるか否かをチェックするものである。今回は自己評価を実施した後、同級生にピア・アセスメント(仲間による評価)として他者評価を実施した。結果を集計し、翌週提示し、親和図を作成し全員で討議した。更に1週間後効果を確かめるため、再度チェックを行った。
【結果】自己評価(カッコ内は他者評価)の48項目の中で改善が必要であるとする比率が50%を超える項目は初回7項目(4項目)、2回目6項目(4項目)、30%以上―50%未満の項目も初回9項目(6項目)、2回目6項目(4項目)であった。全項目で改善を必要とする比率の平均値は自己評価(カッコ内は他者評価)初回23%(18.8%)、2回目17.1%(15.2%)であった。
【考察】一連のチェックリストの点検評価、結果の親和図作成による検討、そして再評価という問題解決学的方法を実施し、改善を必要とする比率の高い項目の減少、全項目の改善を必要とする平均比率の減少が見られたことは、マーナー、外見、態度等の変容が生じたことを意味する。チェックリスト方式は自己点検する作業を通じて自己反省を促させ、集計結果をフィードバックさせ親和図を作成することにより改善すべき点の全貌を把握し行動の変容が確認できるもことがわかった。他者評価は個人による応答が異なるが、全体集計を検討することで個人攻撃等の欠点を補えることも可能であった。
【まとめ】チェックリストによる自己・他者評価を実施し、結果を集計し全体討議を行った。それによって改善すべきポイントの減少が示された。チェックリスト法に親和図等を加え結果をフィードバックする一連の教育技法は今後教育現場に問題解決的技法の応用として発展が期待されるであろう。