理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1260
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教育・管理系理学療法
電子カルテの理学療法記録に国際生活機能分類(ICF)を活用して
田中 潤北本 雄二
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抄録

【目的】当院では、2004年3月にオーダリングシステムが電子化され、同年9月から電子カルテの全面的な運用が始まり、リハビリ部門も医師や看護師と共に同一の記事欄に経過記録を入力するようになった。しばらくの間、どのような形式で理学療法記録を記載すれば良いのか試行錯誤の状態が続いたが、2004年12月からICFを使い始め、現在に至るまでに幾多の所見を得たので報告する。
【方法】理学療法記録にICFのコードと評価点をいかに活用するかについては種々考えられるが、演者は入院患者の初期評価をする際の評価項目に当該分類を用いている。当院が電子カルテを運用していることから、評価項目は定型文として予め任意に登録しておくことが出来るが、所見は「評価点」を使わずその都度自由書きで入力している。定型文の表題を「ICF評価」と記し、大項目を心身機能、身体構造、活動、参加、環境因子、個人因子とし、評価の小項目分けは第2レベル(3桁)の分類を用いるが、コード番号は省略している。同一画面を各職種間で共有していることから字数の制約もあるので、予め代表的な35項目を登録しておき、実際の運用は対象となる症例ごとに、より関係の深い25項目程度を選択し、評価・記載している。なお、この小項目は「リハビリテーション総合実施計画書」の内容とも符合するように選択してあるので、便利なツールとなっている。
【結果】カルテへの経過記録の記載形式を、日本赤十字社本社はSOAPを使うように指導しているが、当院の医師は特に統一はしておらず、看護師は初期看護診断としてNANDA(North American Nursing Diagnosis Association)を用いている。通常、入院患者の理学療法開始時には患者基礎データ、看護基礎データ、連絡先・家族背景などが既に入力されており、PTはこれらのデータを利用し、補完するような形で評価を進めることが出来る。また、WHO国際障害分類(ICIDH)についは負のイメージもありICFに改正されたようだが、問題点を抽出し解決への道筋を立てていくには、ICIDH的発想の方がより明快な理論付けが出来るだけに、存続させる意義はあると考える。
【考察】ICFを臨床の場で普及させ、臨床記録に臨床効果の判定など統計学的な価値を持たせるには、少なくとも疾患別の必須コードと評価点を規定する事が必要である。そして、他職種の方々と共通認識をもってICFを活用していけば、利用範囲と価値は飛躍的に広がるが、コード番号と評価点が一般化するには更に時間を要すると思われる。

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© 2008 日本理学療法士協会
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