理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-171
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理学療法基礎系
廃用性筋萎縮に対する運動効果のマウスを用いた検討
伊東 佑太岡元 信弥片岡 亮人縣 信秀宮津 真寿美平野 孝行河上 敬介
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抄録
【目的】筋萎縮の回復を目的に負荷運動がよく用いられる.しかし、萎縮した筋は過負荷により損傷を起こしやすいことが知られており、どの程度の負荷運動が効果的かは不明である.一方、筋萎縮の回復に関する運動方法やメカニズムについての動物実験には、トレッドミル走や水泳などが用いられる.しかし、これらの運動は持久性の運動で、負荷運動の効果とは異なる可能性がある.そこで、萎縮筋に対する効果的な運動負荷方法の開発やそのメカニズム解明の第1段階として、立ち上がり運動を自発的に行うモデルマウスを作製し、廃用性筋萎縮に対する立ち上がり運動の効果を検証した.
【方法】10週令ICR雄性マウス18匹に、スキナーボックス内で立ち上がり運動のオペラント学習を1週間行った.スキナーボックスは、3秒間の音・光刺激の後に床面から電気刺激が発生するようにした.この3秒間に、マウスが立ち上がり、側壁のスイッチを押すと電気刺激が発生しないように設定し、立ち上がり運動を学習させた.学習後12匹のマウスには尾部懸垂を2週間施した後、1週間の立ち上がり運動を行う群(TS+T群)および1週間の普通飼育群(TS+NT群)に分けた.また6匹は、学習後3週間、尾部懸垂も立ち上がり運動も行わなかった(CON群).立ち上がり運動は1セット50回、1日2セット行った.評価は、ヒラメ筋の凍結切片を作成、H-E染色を施し、切片中すべての筋線維横断面積と筋線維数を、画像解析ソフト(scion image、imageJ)を用いて測定した.また、筋採取48時間前にBrdUを腹腔内注射し、免疫組織染色により増殖した核数を評価した.なお、本実験は本学動物実験委員会の承認を得て行った.
【結果】1週間のオペラント学習により、全てのマウスが立ち上がり運動を学習できた.なお、学習最終日には、平均86±9%の割合で電気刺激前に立ち上がれた.TS+T群の平均筋線維横断面積は、1859±204μm2で、TS+NT群(1281±129μm2)に比べ、有意に大きかった(p<0.05).なお、TS+T群とCON群(2104±309μm2)との間には差がなかった.しかし、筋線維数は、TS+T群(628±83.9本)とTS+NT群(669±154.5本)の間で有意な差はなく、また、BrdU陽性の核数も、TA+T群とTS+NT群で差が見られなかった.
【考察】本研究では、筋萎縮後に自発的な負荷運動を行うマウスモデルが作製できた.萎縮筋に対する立ち上がり運動は、筋線維横断面積の回復には有効であるが、その時に筋線維数は増加していないことがわかった.なお、筋衛星細胞の増殖を見るために、筋採取の48時間前に BrdUを投与したが、この時期はすでに筋衛星細胞の増殖期を過ぎていた可能性がある、別の評価時期での検討が必要だと考える.今後、評価法の改善をすると共に、効果的な負荷量(マウスに背負わせる重りの重さや時間)、タイミングなどを検討し、さらにそのメカニズムを明らかにしたい.
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© 2009 日本理学療法士協会
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