理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-172
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理学療法基礎系
筋萎縮に伴うコスタメア構造の変化とFAKリン酸化
縣 信秀加藤 茜笹井 宣昌清島 大資伊東 佑太宮津 真寿美早川 公英平野 孝行河上 敬介
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キーワード: 除神経, FAK, コスタメア
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抄録
【背景・目的】身体が不活動状態になると、筋の収縮活動は減少し、筋萎縮が生じるが、そのメカニズムには不明な点が多い.筋萎縮に対して理学療法を行う我々には、このメカニズムを知ることは重要である.骨格筋のZ帯付近には、FAK、paxilln などのタンパク質群から構成されているコスタメア構造がある.このコスタメア構造は、筋に加わる機械刺激により誘導される細胞内シグナル伝達経路に関与していると考えられている.一方、心筋細胞に存在するコスタメア構造では、機械刺激が減少すると、paxillin の局在の変化と、paxillinと結合する部位を持つ FAK の不活性化が起こり、心筋細胞は細くなるといわれている.これらのことから骨格筋においても、機械刺激の減少によって paxillin の局在や、FAK の活性が変化し、筋萎縮が生じると考えられる.そこで本研究では、ラットの坐骨神経を切除することによって作製した筋萎縮モデルにおける、paxillin の局在とFAK の活性化との関係について調べた.
【方法】本研究は、本大学医学部保健学科動物実験委員会の承認を得て行った.対象として、8 週齢の Wistar 系雄性ラット(n=11)を用いた.麻酔下で、ラット左側の坐骨神経を切除し、左ヒラメ筋を DEN 群とした.右側の坐骨神経には、坐骨神経を露出させ、神経切除を行わない sham 手術を施し、右ヒラメ筋を CON 群とした.これまでに、除神経術を行って 3 日目のラットのヒラメ筋は、除神経を行わないものに比べ、筋湿重量で18%、筋線維断面積で30% 減少する.そこで、本実験では除神経術から 3 日後に両側のヒラメ筋を採取することにした.さらに、11匹中5匹のラットから採取した筋は、液体窒素で冷却したイソペンタン中で急速凍結させ、クライオスタットを用いて16μm厚の縦断切片を作製し、paxillin 抗体にて免疫染色を施した.本切片の観察には共焦点レーザー顕微鏡(ZEISS、LSM 510 META)を用いた.残りの6匹のラットから採取した筋は、サンプルバッファーでタンパク質を抽出し、FAK のリン酸化の割合をウェスタンブロット法によって測定し、FAKの活性化の指標とした.
【結果】CON群の縦断切片における paxillin は、Z帯付近に局在していることが分かった.ところが、DEN 群のZ帯付近における paxillin の局在性は低く、CON群よりも広い範囲に存在していた.また、ウェスタンブロットの結果から、DEN 群のFAKリン酸化の割合は、CON 群に比べ 20%、有意に減少していた (p<0.05).
【考察】除神経による萎縮筋では、心筋と同様に paxillin の局在変化と、FAKの活性の低下が起こることが分かった.この現象は、除神経による機械刺激の減少が影響を及ぼしていると考える.しかし、paxillin の局在変化や、FAK の活性化が筋タンパク質の合成低下のメカニズムに関与しているかどうかは不明であり、今後の検討課題である.
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© 2009 日本理学療法士協会
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