理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-003
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理学療法基礎系
上肢把持型振動刺激装置使用時の肩関節周囲筋筋活動に関する研究
岡邨 直人相馬 俊雄関根 裕之大野 健太
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抄録

【目的】近年,スポーツ施設や医療機関,地方自治体などで,筋力増強,柔軟性向上などを目的に,振動刺激装置(以下,ガリレオ)を用いたトレーニングが行われている.ガリレオは,振動板上で立位や軽いスクワット姿勢保持を行う全身ガリレオと,手で把持しながら振動刺激が得られる上肢把持型振動刺激装置(以下,上肢ガリレオ)がある.しかし,上肢ガリレオの効果について筋電図学的に検討を行なった報告はほとんど見られない.そこで本研究の目的は,上肢ガリレオを用いて,振動周波数と上肢の肢位を変化させた時の肩関節周囲筋の筋活動量を明らかにすることである.

【対象と方法】対象は本研究内容を十分に説明し,同意を得た健常成人男性10名(平均年齢:26.0±4.7歳,身長:169.8±5.7cm,体重:65.8±8.0kg)とした.使用機器は,表面電極,筋電図解析装置一式,上肢ガリレオ(株式会社エルクコーポレーション)を用いた.課題動作は,右手で上肢ガリレオ(重さ3kg)を保持して(1)端座位で肘関節90°屈曲位,(2)端座位で肩関節90°屈曲位,(3)背臥位で肩肘関節90°屈曲位,(4)背臥位で肩肘関節60°屈曲位の4条件とし,その肢位で10秒間保持した.筋電図(EMG)導出は,右側の上腕二頭筋,上腕三頭筋,三角筋(前部・中部・後部線維)とした.振動周波数は振動なし,10Hz,20Hz,30Hzの4条件とした.動作中のEMGは,サンプリング周波数1KHz,バンドパスフィルタ35~500Hzで計測した.解析は,運動開始から5秒後以降の3秒間の各2回の平均値を算出した.正規化は,各筋の最大随意等尺性収縮中の区間300msecの積分値(IEMG)を基準とした(%IEMG).統計処理は4条件において一元配置分散分析を行い,事後検定にはTukey-Kramer法を用いて,有意水準を5%とした.

【結果】すべての筋・肢位において,振動なし・10Hz・20Hzより30Hzで有意に大きな値を示した.肩関節90°屈曲位保持の三角筋前部線維の30Hzでは46.7%MVC,三角筋中部線維の30Hzでは59.6%MVCの筋活動量がみられた.また,すべての筋において,振動なしの活動量に対して,30Hzで1.5~4倍の活動量がみられた.

【考察】結果より,30Hzで振動なし・10Hz・20Hzより大きな筋活動量を示した.これは実際に機器を把持した際の筋活動量に加え,振動刺激により筋に反射性収縮が発生しているため,筋活動量が増加したと考えられる.また,肩関節90°屈曲位の三角筋前部・中部線維で約50~60%という筋活動量が得られた.このことから30Hzでは,肩関節周囲筋の筋力増強としての効果が期待できると考えられる.

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© 2009 日本理学療法士協会
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