理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-057
会議情報

理学療法基礎系
健常者の足底母趾表在感覚,複合感覚の推移と大腿骨頸部骨折患者との比較
宮島 恵樹松田 雅弘高梨 晃塩田 琴美細田 昌孝田邉 信太郎小西 由里子
著者情報
キーワード: 足底感覚, バランス, 転倒
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】加齢に伴い足底母趾表在感覚,複合感覚およびバランス能力は低下する実態を明らかにし,加えて,転倒骨折患者の足底母趾表在感覚,複合感覚は,同年代より低いという仮説を検証することとした.
【方法】対象は健常成人84名(男性42名女性42名)を若年群(平均年齢29.8±4.9歳)中年群(平均年齢52.2±7.6歳)老年群(平均年齢78.6±6.3歳)の3群にわけ,転倒骨折にて入院した患者17名(平均年齢80.4±8.2歳)の入院同日の足底感覚と健常者老年群との比較検討を行なった.両群共に測定部位は母趾を選択し2種類の測定器具にて表在感覚・複合感覚の測定を行った.
【結果】健常者群においては母趾の表在感覚,複合感覚,動的バランス共に,各年群における男女間において有意差は認めなかった.複合感覚,動的バランスについては年群による差は有意を示し加齢による複合感覚,動的バランスの低下を認めた.それらの結果をもとに患者群の入院時表在感覚・複合感覚閾値を健常者老年群と比較した結果,患者群の表在感覚は有意に高い値(p<0.05)を示しており,複合感覚では有意な差は認められなかった.
【考察】健常者老年群と転倒骨折患者の入院時の足底感覚を比較した.結果,母趾表在感覚において有意な差を認めた.このことから,転倒の原因を考えた時,一要因として母趾表在感覚の低下により転倒を起こした可能性が考えられた.健常者結果と照らし合わせて考えてみると,健常者の加齢と足底感覚の関係においては,母趾複合感覚に有意な差を示していたが,今回の転倒骨折患者の入院時足底感覚では,健常者と比較し母趾表在感覚に有意な差が存在した.よって,母趾複合感覚には加齢による有意な変化があり母趾表在感覚には加齢による有意な変化はないにも拘らず健常者老年群と患者群との間には有意な差が存在したことから,転倒との因果関係を考えたとき母趾表在感覚の影響が高いのではないかと考えられた.しかし,加齢による母趾複合感覚の低下や動的バランス能力の低下が起きるということは,転倒以前より転倒予備軍であった可能性も推測でき,日常生活だけでは足底感覚や動的バランスの維持は難しいとの推測もできる.そのことからも普段からの足底感覚を意識した運動は,転倒予防に効果的であり,予防介護にもつながると考えられる.今後は,足底感覚をさらに細分化した研究と,足底への刺激入力方法や運動の種類を検討する必要性を感じた.
【まとめ】母趾複合感覚,動的バランスでは,加齢における低下が起こることが確認できた.また,転倒骨折患者の入院時の母趾表在感覚は,同年代の健常者よりも有意に感覚の低下を認め,母趾表在感覚の低下が転倒を起こす一要因である可能性が示唆された.

著者関連情報
© 2009 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top