理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-069
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理学療法基礎系
歩行の至適・最大速度の再現性と歩行予備能について
―健常成人によるTUGを用いた基礎研究―
北地 雄原 辰成
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キーワード: 歩行予備能, 再現性, TUG
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抄録

【目的】日常生活での歩行は非常に多目的であり、歩行それ自体が目的となることは少なく目的を持った移動手段として遂行していることが多い.通常で発揮される機能と、最大で発揮される機能に差があれば機能の容量が高いと言え、容量が高いと他の事へもその容量を配分することが出来る.容量の配分という視点から二重課題での歩行能力も検討されているが、課題により個人差が生じる可能性がある.ここでは容量を予備能として考え、歩行の予備能が日常での安全な歩行、つまりは転倒リスクや歩行自立度と関連していると考えた.しかし、歩行予備能を検討した報告は少ない.そこで今回は健常成人を対象とし、歩行予備能の基準値を明らかにし、今後の歩行予備能を検討する基礎資料を得ることを目的とした.
【方法】対象は骨折などの整形外科疾患の既往のない健常成人32人(平均年齢26.8±4.9歳、男性16人、女性16人)であった.対象者には事前に研究の概要を口頭にて説明し同意を得た.調査項目は、至適・最大速度条件とも再現性の検討がされているTimed “Up & GO” Test(TUG)を用いた.原典に準じた至適速度条件(TUGcom)と速度を最大とした条件(TUGmax)にてそれぞれ3回繰り返して計測した.予備能の指標(TUG-Reserve:TUG-R)は橋立らの報告からTUGmaxに対するTUGcomとTUGmaxの差の割合を算出した(TUG-R=[(TUGcom-TUGmax)/TUGmax]*100/TUGmax).統計学的解析は、TUGcom、TUGmaxとともにTUG-Rの検者内信頼性として級内相関係数(ICC)を算出した.統計処理は統計解析ソフトSPSS15.0J for windowsを使用した.
【結果】TUGcom、TUGmaxおよびTUG-RのICC(1.1)はそれぞれr=0.94、r=0.94、r=0.87であった.TUGcom、TUGmaxおよびTUG-Rの結果はそれぞれ7.9±0.9sec、5.4±0.6sec、8.8±4.3であった.
【考察】今回の結果から、歩行自由度の高い健常成人においても再現性が確認された.これにより高い歩行能力を有する対象に対してもTUGは適応可能であり、それらの対象には今回の結果が有用な基礎資料となると考えられる.橋立らの報告は比較的活動性の高い高齢者(72.6±5.0歳)を対象としており、その結果はTUGcom、TUGmaxおよびTUG-Rはそれぞれ8.6±1.4sec、7.2±1.2sec、3.0±1.8である.今回の健常成人の結果と比較して、予備能の指標としたTUG-Rで明らかに低い値を示しTUGmaxで高い値を示している.これは加齢による歩行能力の低下と考えられ、歩行能力の中でも特に予備能が低下していることが示唆される.歩行予備能が低下すれば、日常で発揮している至適速度でも努力を要する歩行をしていることが考えられ、歩行に応用性、安全性がなくなり、転倒などの危険性が増加すると考えられる.今後はこの歩行予備能と転倒や歩行自立度との関係を検討したい.
【まとめ】健常成人による歩行予備能は8.8±4.3であった.これを下回れば歩行予備能の低下が疑われると考えられる.

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© 2009 日本理学療法士協会
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