抄録
【はじめに】 パーキンソン病(以下,PD)関連疾患患者は,123種類ある難病(特定疾患)の中で2番目に多くみられる疾患である.高齢になるほど発病率が高くなり,患者数が増加することが予想されている.また,薬物療法・等によりPD患者の平均余命が延伸する一方,家族介護者はケア期間の延伸から介護期間が長期化している.本調査の目的は,第1に在宅PD患者の家族介護者のADL項目ごとの介護頻度を明らかにする.第2にADL項目ごとの介護負担感と介護頻度の関連を明らかにする.
【参加者】 特発性PD患者と同居している主介護者57名(男性34名,女性26名,平均年齢63±12歳).特発性PD患者57名(男性18名,女性36名;3名データ不備,平均年齢70±9歳,平均罹患期間11±6年,Unified Parkinoson's Disease Rating Scale;UPDRS得点60±22,最小20,最大125,;4名データ不備).なお,参加者には調査の目的・内容を説明し,書面及び口頭にて同意を得た上で実施した.
【調査方法】 アンケート調査はPD患者の主介護者による自記形式にて実施した.
1)介護頻度:Barthel Index(以下,BI)の10項目ごとに,連続する7日間の介護記録から介護を1日のうちに1回以上実施した日の日数(日/週)を数えた.
2)介護負担感:Zarit Caregiver Burden Interview(以下,ZBI)は全22項目から構成され,各項目の配点は0点「介護を全く負担と思わない」から,4点「非常に大きな負担である」の5段階の総合得点88点である.本調査では,荒井らが開発したZarit介護負担度尺度日本語版(以下,J-ZBI)を使用した.
【調査結果】 〔1.介護頻度〕 BI10項目ごとの介護頻度は,[食事]は3.9±2.9 (以下,平均値±1標準偏差)(日/週),[移乗]は5.1 ±2.7 (日/週),[整容]は3.6 ±3.1 (日/週),[トイレ]は4.6 ,1±2.9 (日/週),[入浴]は3.9 ±2.7 (日/週),[歩行]は3.9 ±2.8 (日/週),[階段]は2.3 ±2.7 (日/週),[更衣]は5.5 ±2.2 (日/週),[排便]は2.7 ±2.8 (日/週),[排尿]は3.7 ±3.0 (日/週)であった.1週間のうち5日以上の高い介護頻度であったのは[移乗]と[更衣]の2項目であった.逆に,1週間での介護頻度が3日に達しなかったものは[階段]と[排便]の2項目であった.他の6項目は1週間に3日~5日であった.
〔2.介護負担感との関連〕 主介護者のJ-ZBI得点は,25.9±17.1(点)であった.J-ZBI得点とBI項目ごとの単相関分析の結果,J-ZBI得点と相関が高い項目は[トイレ],[更衣],[排便],[排尿]の4項目であった.逆にJ-ZBI得点と関係の弱い項目は[食事],[移乗],[整容],[階段]の4項目であった.
【まとめ】 1)PD患者の家族介護者は[移乗]と[更衣]の2項目で介護頻度が高く,[階段]と[排便]の2項目で介護頻度は低い.
2)PD患者の家族介護者において,介護負担感と関連が高い介護頻度の項目は[トイレ],[更衣],[排便],[排尿]の4項目である.