理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-254
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神経系理学療法
パーキンソン病患者の主介護者における介護負担感の変化
小林 由貴子
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抄録
【はじめに】
近年,要介護者となる高齢者が増加し,要介護者の半数以上が在宅で介護を受けていることから,家族が介護を行う在宅介護の割合が高くなっている.そのため介護負担感に焦点をおいた研究が注目されている(荒井,2004). パーキンソン病(以下,PD)は在宅介護の割合が高い疾患の一つであり,慢性進行性の疾患であるため,時間の経過とともに重症度の悪化,日常生活活動(以下,ADL)の低下に伴い,主介護者に与える精神的,身体的負担は大きくなると考えられる.しかしPD患者の主介護者における介護負担感の変化については明らかにされていない.そこで本研究では,PD患者の主介護者における介護負担感の一年間の変化を明らかにすることとした.
【方法】
特発性PD患者24名(Modified Hoehn & Yahr Stage,以下H&Y 3~4.5)とその同居している家族介護者を対象として,以下の項目の調査を実施した.(1)Zarit 介護負担尺度日本語版(J-ZBI),(2)Geriatric Depression Scale15(GDS15)老年期うつ症状尺度,(3)Pittsburgh Sleep Quality Index(PSQI)日本語版 標準化された睡眠の質に対する質問票,(4)Unified Parkinson’s Disease Rating Scale(UPDRS)PDの精神機能,ADL,運動能力,治療の合併症の評価指標.GDS15とPSQIは主介護者,患者の両者を対象に調査を行った.一年後に同項目の追跡調査を実施した.追跡調査時とベースライン調査時の差分を求め,一年間の変化量を算出した. 参加者には,本研究の目的・内容を口頭および書面にて十分な説明を行い,書面による同意を得た.
【結果】
J-ZBIの平均値はベースライン調査時32.1±15.7,追跡調査時34.8±3.4と比較的高い値であることが明らかとなった(Hebert R,2000).一年間で有意な変化を認めた項目は,PD患者のPSQI 1.33±2.82(点/年),UPDRS 10.4±16.9(点/年) (P<0.05)であった. 一方, 主介護者のJ-ZBIの一年間の変化量は2.67(点/年), PSQIは0.04(点/年),PD患者のGDS15は0.21(点/年),主介護者GDS15は-0.21(点/年)であった(n.s.).
【まとめ】主介護者の介護負担感及び睡眠障害は一年間では変化しない.その一方, PD患者の総合的な症状,及び睡眠障害は悪化する.
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© 2009 日本理学療法士協会
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