理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-255
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神経系理学療法
進行期パーキンソン病に対する両側視床下核刺激療法の効果
―運動症状の長期追跡調査結果―
山中 武彦石井 文康清水 美和子坪井 理佳藤井 園子清水 陽子堀場 充哉山下 豊長谷川 竜也田中 照洋二田 真里浅井 友詞梅村 淳松川 則之小鹿 幸生
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抄録
【目的】両側視床下核刺激療法(bil STN-DBS)は,進行期パーキンソン病(PD)の運動症状を改善する目的で施行される外科的治療法である.その目的は,振戦,固縮,無動,姿勢調節障害の四大症状の改善とジスキネジア,on/off現象などのL-dopa服用による弊害を解消することにある.本療法については諸家により報告され,一定の効果が示されているが,症状別の効果に関しては若干の相違が見られる.その要因として,評価時期が異なること,術後のL-dopa製剤量の設定の相違などが挙げられる.今回我々は,本療法の運動症状への影響を明らかにするため,評価時期を統制し長期的に追跡調査を実施した.
【方法】対象は,本療法施行のPD患者45例(男性15),年齢(62.9±8.1歳),Hoen & Yahr stage(H&Y);on期(2.0 range:1.0-4.0),off期(4.0 range:3.0-5.0 ),罹病期間(10.8±5.7年)であった.術前のレボドパ換算1日需要量(LEDD)は,630±244.8mgであった.全症例に対し,術前,術後1ヶ月(以下,短期),術後12ヶ月以上(以下,長期)の3時点で,運動機能評価(Unified Parkinson’s Disease Rating Scale;UPDRS)を実施した.得られたデータについて,下位項目を運動症状別(振戦,固縮,歩行,寡動,姿勢の安定性,言語,ジスキネジア)に分類し,時期別比較を行った.なお,本研究は,当該施設の倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】UPDRS運動症状の総合点(range 0-108)では,術前(on期:22.5±9.2,off期:39.9±15.5)に対し,短期18.5±9.2,長期17.2±8.6(いずれもon期)と有意な改善がみられた.下位項目では,固縮,ジスキネジアにおいて術前-短期,術前-長期の成績間に,寡動において術前-長期の成績間に有意な改善がみられた.振戦,姿勢の安定性は改善傾向を示し,言語は変化なく,歩行は長期で若干低下傾向を示した.術後のLEDDの割合は,短期;術前比(-74%),長期;術前比(-52%)であった.
【考察】今回,本療法が運動症状に与える影響について長期的に追跡,UPDRSの下位項目分析を実施し,術後の評価時期によって運動症状の成績が変化することを認めた.術後,定期的に詳細な評価を実施する必要性が示唆された.また,下位項目分析の結果,運動症状ごとに効果が異なることが確認されたが,本療法の効果として示されている振戦,固縮,寡動症状の改善,薬物減量のうち,振戦を除いて効果が認められ,加えてジスキネジアへの効果が認められた点は,これまでの報告には見られない点であった.我々の療法の特異性は術後のLEDD設定にあり,この影響が有力視される.bil STN-DBSの術後フォローには,薬物も含めた多面的なモニタリングが重要であると考えられた.
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© 2009 日本理学療法士協会
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