理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-304
会議情報

神経系理学療法
当院における脳出血患者に対する急性期・亜急性期リハビリテーションの現状
―リハビリテーション開始時の重症度、ADL、歩行自立度と転帰先の関連―
佐藤 布実香澤田 三津子西川 典利今野 薫小林 雅之
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抄録
【目的】当院では主に脳血管障害に対する急性期・亜急性期リハビリテーション(以下リハ)を展開している.この中で在宅復帰はもちろんのこと、転院に至る患者も少なくない.そこで今回の研究では、リハ開始時の麻痺の重症度、ADL、歩行自立度に着目して脳出血患者の障害像を把握し、それらと転帰先の関連性を明らかにすることを目的とした.
【方法】対象は平成18年4月1日~平成20年6月30日までに急性発症にて当院入院、リハを実施した脳出血患者134例(男性85例、女性49例).平均年齢68.7±11歳、平均在院日数43.6±31日.出血部位は被殻:40、視床:36、小脳:15、皮質下:11、脳幹部:10、脳室内:6、その他:16例とした.麻痺の有無、転帰先、在院日数とリハ開始時の重症度(B/S:Brunnstrom Stage)(下肢)、ADL能力(FIM:Functional Independence Measure、BI:Barthel Index)、歩行自立度(屋内不能/介助/自立/屋外自立の4段階に分類)を後方視的に調査し、プライバシーの保護に十分配慮した上でデータベース化した.在宅群と転院群に分けて比較検討し、統計処理はt検定、χ2検定を用いて有意水準は5%未満とした.
【結果】脳出血患者全体の84%が運動麻痺を呈し、そのうち60%以上がリハ開始時B/S5以上であった.転帰先は全体の59%が在宅(以下在宅群)、37%が転院(以下転院群)となった.転院群のうち、回復期病院転院24%、長期療養型病院7%、その他2%、施設入所4%であった.それぞれの平均在院日数は在宅群35.1±28.5日、転院群58.3±30.6日、平均年齢は在宅群66±10歳、転院群72±12歳であった(p<0.05).リハ開始時の麻痺の重症度は在宅群の85.5%がB/S5以上であり、転院群の70%がB/S3以下であった.リハ開始時のFIMの平均得点は在宅群87±32.5点、転院群40±24.9点、BIでは在宅群58.1±33.5点、転院群17.5±22.9点であった.リハ開始時の歩行自立度は、在宅群では屋内不能37%、介助21%、屋内自立以上22%であり、転院群では屋内不能76%、自立以上はいなかった.
【考察】脳出血患者全体として、運動麻痺の割合が多く、比較的軽症という傾向にあった.さらに、在宅群は転院群と比較して若年で軽症、リハ開始時のFIM、BI得点ともに有意に高く、屋内介助歩行以上のレベルに多い結果となった.現在、脳卒中に関する多くの研究により、その機能回復には年齢、重症度、初期のADLなどが寄与することがわかっており、今回の研究において、これらと転帰先との関連性も推測された.しかし、患者の障害像をとらえ、ゴール設定を行うためには、今回焦点をあてた因子だけではなく、合併症、高次脳機能や社会的背景などその他の要因も十分に考慮しなければならないと考える.
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© 2009 日本理学療法士協会
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