理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-282
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神経系理学療法
脳出血における脳室内穿破の有無と機能予後との関係
―退院時の歩行獲得率に着目して―
安部 陽子大坊 雅彦山田 英司
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抄録
【目的】
脳出血において脳室内穿破(以下穿破)を伴う出血例では急性期における意識障害が強く,また呼吸器合併症や術後の影響から早期離床・早期歩行が遅延する傾向にある.そこで今回,穿破の有無が機能予後にどのような影響を及ぼすか,退院時の歩行獲得率に着目して穿破群と非穿破群とで歩行獲得の可否や身体機能を比較検討する事を目的とした.
【対象および方法】
対象は平成17年6月から平成20年1月に初発で当院に入院したテント上脳出血例23例とした.穿破群(14例)非穿破群(9例)において退院時介助歩行も含めた歩行獲得率を比較した.また2群において血腫量,入院時NIH Stroke Scale(NIHSS),退院時NIHSS,NIHSS改善度(入退院のNIHSS得点の差分を入院時NIHSSで除した値,以下改善度),入院期間で差があるか検討した.さらに血腫量と入院時NIHSSおよび改善度と,年齢と改善度との関係について検討した.血腫量の測定はCTにて行い,最大径×それと同一スライスで90度の最大径×スライス数÷2で計算した.CTの撮像は医師の指示の下放射線技師が行った.統計学的検定にはt検定とピアソンの相関関数を用い,有意水準は5%とした.この研究は当院の倫理委員会で承認されたものである.
【結果】
退院時歩行獲得率について,非穿破群が100%に対し穿破群では14.3%(2例)であった.血腫量,入院時NIHSS,退院時NIHSS,入院期間においては穿破群が,改善度においては非穿破群が有意に高値を示した.血腫量と入院時NIHSSには正の相関(r=0.58)血腫量と改善度には負の相関(r=-0.52)が認められたが,年齢と改善度には相関が認められなかった(r=-0.20 p=0.36).
【考察】
大出血ほど穿破し易く,穿破群では入退院時共に重症で身体機能改善度も低く,遷延性意識障害や水頭症合併等により入院期間も長くかかる事が明らかとなり先行研究と同様の結果であった.また,血腫量が多いほど入院時重症で改善度も低いことから血腫量は機能予後推定の因子になり得る傾向が認められた.年齢と改善度には相関がなかった理由として, 75歳以上は重症例のほとんどが転帰不良だが74歳以下は重症例でも転帰良好という報告もあるように,直線相関を示すのではないと考えられる.歩行の可否について穿破群で獲得可能となった2例は皮質下出血,脳室内出血であった.これらの出血は予後良好との報告もあり,出血部位が錐体路にかかっていないことが起因していると考えられる.穿破すると歩行獲得が困難な傾向があり,非穿破例では歩行獲得を期待した早期介入の必要性が示唆された.
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© 2009 日本理学療法士協会
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