理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-413
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骨・関節系理学療法
肩腱板断裂における断裂の深さと術後機能の回復
木村 孝入江 保雄新保 健次清水 啓史陳 宗雅平田 正純黒川 正夫
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抄録
【目的】当院では肩腱板断裂に対し、鏡視下腱板修復術を施行しており、全層小断裂と不全断裂は同様の術後後療法を実施している.今回、全層小断裂と滑液包面不全断裂の術後機能回復の違いについて比較検討した.
【方法】対象は2005年11月から2008年3月の間で腱板の修復術を行った33例中、6ヶ月間の機能評価が可能であり本研究の目的に同意が得られた24例であった.内訳は全層小断裂(全層群)13例、滑液包面不全断裂(表層群)11例であった.術前、術後自動運動開始時、術後3ヶ月、術後6ヶ月に肩関節屈曲、外転、下垂位外旋の自動運動可動域を測定した.群間での可動域の変化と群内での経時的変化を比較した.また、術前と術後6ヶ月で日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOA)における痛みとADLのスコアを抽出し、比較検討するとともに可動域との相関を検討した.
【結果】全層群と表層群の可動域の比較では、術後6ヶ月での屈曲(全層群149.6°、表層群153.6°)と外転(全層群150.0°、表層群156.8°)に有意な改善を認めた.群内での比較では全層群内の屈曲と外転で自動運動開始時(屈曲115.4°、外転99.2°)、術後3ヶ月(屈曲138.1°、外転131.5°)、術後6ヶ月(屈曲149.6°、外転150.0°)で改善を認めた.表層群内の屈曲では(自動運動開始時126.8°、術後3カ月146.6°、術後6カ月153.6°)全ての期間に有意な改善を認め、外転では自動運動開始時(113.2°)から術後3ヶ月(138.6°)と自動運動開始時から術後6ヶ月(156.8°)、外旋では自動運動開始時(40.5°)から術後6ヶ月(60.7°)の間に改善を認めた.JOAスコアでは術前の痛みに群間での有意差を認めた.両群内で術前の屈曲と外転でそれぞれADLに正の相関を認め、表層群では術前の屈曲と外転で痛みに負の相関が認められた.
【考察】術後6カ月で表層群が有意に可動域の改善を示したことから、表層断裂は力を伝達する筋内腱線維の連続性が保たれていることにより術後の可動域が良好であったと考えられる.全層群内での経時的変化では、屈曲と外転においては再建された腱板機能の回復には少なくとも自動運動開始時から術後6カ月の期間を要すると考えられるのに対し、表層群の外転では術後3ヶ月までの回復が顕著であり、術後早期の外転運動の改善が重要であると考えた.術前の痛みは表層群に強い傾向がありADLは障害されやすいが術後機能への影響は少なく、術前の運動療法において痛みの緩和を考慮したADLの改善が必要であると考えた.
【まとめ】腱板滑液包面不全断裂においては術後3ヶ月までの外転可動域の改善が重要であると考えた.術前の痛みによる可動域制限がADL障害を引き起こしている要因と考えた.
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© 2009 日本理学療法士協会
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