理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-414
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骨・関節系理学療法
腱板機能検査による腱板断裂のスクリーニング
田中 公二立花 孝長井 大治亀田 淳金田 光浩黒田 崇之谷 祐輔春名 匡史
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抄録
【目的】腱板断裂の確定診断を行う上で関節造影やMRIを用いる方法があるが、全ての施設でこれらが完備されているわけではない.そこで今回、徒手で簡便に行える腱板機能検査に対し、臨床においてより正確に腱板断裂の有無を判断できるようにすることを目的とし、陽性、陰性の判断基準を変えて比較検討した.
【方法】対象は肩の痛みを訴えて当院を受診し、健側に腱板断裂の既往がなく、棘上筋テスト、棘下筋テストの筋力が共に5であった169名(平均年齢58.2才、男性122名、女性47名)である.来院時に腱板機能検査(棘上筋テスト、棘下筋テストを実施、筋力のレベル付けはMMTに準じた)を実施し、その後関節造影を行った(169名中85名に腱板断裂を確認).そして棘上筋テスト、棘下筋テストでそれぞれにおいて、<A>痛みを生じるものを陽性、筋力が3未満のものを陽性、<C>痛みを生じる、または筋力が5未満のものを陽性、<D>痛みを生じる、または筋力が4未満のものを陽性、という4通りで陽性、陰性に分けた.その後、それぞれ感度、特異度、陽性予測値、陰性予測値を算出した.
【結果】上記した4通りで、<A>棘上筋テスト:感度81%、特異度35%、陽性予測値56%、陰性予測値65%、棘下筋テスト:感度72%、特異度65%、陽性予測値68%、陰性予測値70%、棘上筋テスト:感度12%、特異度100%、陽性予測値100%、陰性予測値53%、棘下筋テスト:感度11%、特異度99%、陽性予測値90%、陰性予測値52%、<C>棘上筋テスト:感度93%、特異度23%、陽性予測値55%、陰性予測値76%、棘下筋テスト:感度92%特異度42%、陽性予測値61%、陰性予測値83%、<D>棘上筋テスト:感度92%、特異度30%、陽性予測値57%、陰性予測値78%、棘下筋テスト:感度88%、特異度60%、陽性予測値69%、陰性予測値83%、という結果が得られた.
【考察】結果より、大きく二つのことが考えられる.一つ目はBの結果より、棘上筋テスト、棘下筋テストどちらの場合も、筋力が3未満の場合、つまり抗重力位で検査肢位を取れない場合には棘上筋テストで100%、棘下筋テストで90%の高確率で腱板断裂が見られたことである.二つ目に、Aの疼痛のみで陽性、陰性を判断した結果よりも、C、Dのようにさらに筋力で判断した方が、感度、陰性予測値が高値であったことである.従来腱板機能検査は、疼痛の有無で陽性、陰性を判断する傾向にあったが、疼痛の有無だけでは、感度は高いが腱板断裂の無いものまで陽性と判断され、結果、陽性予測値、陰性予測値共に低値を示してしまう.ここに筋力の評価も加えることにより感度、陰性予測値が上がったことで、テストで陰性が出た場合、つまり痛みがなく筋力を4以上発揮できた場合に腱板断裂が無い確率が80%程度になり、腱板断裂のスクリーニングとしての精度を上げられたと考えられる.
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© 2009 日本理学療法士協会
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