理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-378
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骨・関節系理学療法
膝関節回旋ストレスに着目した外側半月板損傷の症例報告
―歩行でのtoeの向きと疼痛誘発肢位が異なる2症例―
島田 周輔石原 剛加藤 彩奈宮城 健次千葉 慎一大野 範夫
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抄録
【はじめに】Mundermanは歩行での膝回旋中心は脛骨中心より内側、Seungbum Kooは外側で起こると報告している.膝回旋運動の報告は散見されるが、計測の困難さから動的な動きでの膝回旋運動は統一した見解が得られていない.また、それに伴う半月板や膝へのストレスについても不明な点が多い.膝半月板損傷は屈伸と内外旋の協調性の崩れにより受傷することが知られており、理学療法において膝回旋運動を念頭におく必要がある.今回半月板損傷に対し、荷重膝回旋ストレスによる疼痛に着目して理学療法を展開、スポーツ復帰に至った2症例について報告する.

【症例】症例は本報告の主旨を説明し、同意が得られた症例である.
(症例1)20歳男性、左外側円板状半月板損傷.中学生から膝に違和感.19歳テニス中に疼痛出現.受傷後8ヶ月、縦断裂に対して部分切除術施行.術後11日から理学療法開始.(症例2)19歳男性、右外側円板状半月板損傷.18歳アルティメット中の投球にて受傷.受傷1ヵ月後より理学療法を開始、保存療法で経過.

【評価】(症例1)術後2ヶ月、低速でのランニングで膝内側痛があった.ROM-T 左膝屈曲140°/伸展-5°、膝内外旋他動運動での可動性は左>右.MMT左大腿四頭筋4、ハムストリングス4.Q-angle左<右.(症例2)受傷後2ヶ月、小走りにて疼痛があった.ROM-T右膝屈曲130°/伸展-5°、膝内外旋他動運動での可動性は左<右.MMT右大腿四頭筋3、ハムストリングス4.Q-angle左<右.
歩行をデジタルビデオカメラで撮影し動作分析ソフト(ダートフィッシュ社)にて解析、前額面上、立脚期でのtoeの向きを左右で比較しtoe in側とout側とした.症例1は左患側がtoe in、症例2は右患側がtoe outであった.荷重膝回旋ストレステストとして、立位から片脚を前及び後方に踏み出し、toeの向きをin及びoutに向かせて膝痛や違和感の有無を確認.症例1は左後方/toe in、症例2は右前方/toe outにて疼痛があり、各々歩行でのtoeの向きと一致していた.

【経過および考察】症例1は、左立脚中期から終期での過剰な膝内旋ストレス軽減を目的に、大腿四頭筋と殿部~体幹からの姿勢調整と共に膝外旋筋である大腿二頭筋による制動改善を図った.下腿外旋誘導テーピングにてランニング痛の軽減を図り、術後8ヶ月でテニスの練習に復帰した.症例2は、右立脚初期から中期での過剰な膝外旋ストレス軽減を目的に、内側ハムストリングスと膝窩筋、大腿四頭筋での制動改善を図った.受傷後4ヵ月でランニング開始、5ヶ月でアルティメットの練習に復帰した.2症例は同じ外側半月板損傷であり、膝回旋ストレスの増加がランニング痛の原因と考えられた.しかし、toeの向きと荷重での疼痛誘発肢位が異なっており、toe in型とtoe out型で異なる理学療法を展開する必要があった.今後、受傷機転も含め荷重回旋ストレスによる半月板への影響を更に検討する必要性を感じた.
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© 2009 日本理学療法士協会
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