理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-397
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骨・関節系理学療法
徳島県少年野球検診システムの報告
―理学療法士の役割と今後の課題―
吉田 浩通松浦 哲也
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キーワード: 少年野球, 検診, 理学療法士
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抄録

【はじめに】徳島県下における少年野球検診事業の歴史は古く、約30年の実績がある.開始当初は医師の参加によるもので行われていた.平成13年度より検診事業に理学療法士も参加するようになり、現在に至っている.今回、検診システムを紹介するとともに平成19年度における結果を報告する.また検診事業を通し、成長期障害予防における今後の理学療法士の課題について検討した.

【対象と方法】検診は、徳島県下全ての小学生野球チームが出場した大会時に行った.検診システムは、大会前のアンケート調査、現場での一次検診、病院での二次検診の3段階で行った.アンケートでは、野球経験年数、練習頻度、ポジション、疼痛既往の有無、野球継続の意志等について解答してもらった.疼痛既往のあった選手、投手、捕手を一次検診者とし、一次検診では各関節可動域、圧痛、ストレス痛についてチェックした.一次検診結果をチーム単位で集計し、有所見者および投手、捕手には協力医療機関での二次検診(X線検査を中心とした画像診断)にて診断を確定し、必要であれば医師、理学療法士による評価、治療を開始した.

【結果】平成19年度の大会参加チームは154チームで現場の一次検診を受診したのは139チームであり、受診率は90.3%であった.一次検診を受診した1812名のうち、二次検診が必要と判断されたのは1126名で、このうち二次検診に応じたのは291名であり、二次検診受診率は25.8%であった.二次検診の結果、X線異常を認めたのは77.7%(226名)で、異常部位は計265部位であった.内訳は肘75.9%、肩9.1%、踵7.5%、膝4.5%、その他3.0%であった.

【考察】
一次検診受診率は90.3%と高いが、二次検診受診率は25.8%と低い.二次検診の結果、画像診断等で77.7%の異常を認めたことからも、現場での一次検診の有用性が認められる.異常の内訳は、肘関節が圧倒的に多く、肩、踵、膝の順であった.野球の競技特性による結果と考えられるが、同時に全身に障害が発生するということも示唆される.また、長年の検診データの結果から、障害発生率は減少傾向にない.我々理学療法士に今後求められることは、検診技術を向上させ定期的なチェックを継続して行い、成長期障害を早期発見すること、障害予防の観点にたち、指導者や保護者、選手に対し日常練習時のプログラムの提案や、スポーツ動作の分析と動作指導等を行い、フィードバックを行う機会を設けることが重要になってくると考える.

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© 2009 日本理学療法士協会
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