理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-398
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骨・関節系理学療法
膝前十字靭帯再建術後の膝伸展筋力について(第2報)
―術前と術後4ヶ月・5ヶ月を比較して―
羽田 晋也岡野 勝正
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抄録
【目的】膝前十字靭帯再建術後の膝周囲筋力の回復は、関節安定性や再受傷予防、スポーツ復帰に重要である.当院では、術後6ヶ月以降でのスポーツ復帰を目標にその目安を諸家による報告と同様の膝伸展筋力患健比80%以上とし、その趣旨を充分に説明し承諾を得たうえで筋力測定を行っている.我われは第43回本学会において、術後3~4ヶ月で膝伸展筋力患健比が70%以上に回復することを報告した.今回、継続的に膝前十字靭帯再建術後の筋力回復過程を調べる目的で術前後に筋力測定を行い、若干の知見を得たので検討を加え報告する.

【方法】対象は、2006年2月から2007年12月までに当院にて自家半腱様筋腱を用いた膝前十字靭帯再建術を受け、継続的に術前および術後4ヶ月と5ヶ月に筋力測定を行えた44例(男性21例、女性23例)で、平均年齢は29.41±14.16歳であった.筋力測定は、サイベックス社製サイベックスノームを用い、術前および術後4ヶ月と5ヶ月の患側および健側の膝伸展・屈曲筋力ピークトルク値(Nm)を角速度60・180度/秒で測定し体重で除した体重比(%)と患側値を健側値で除した患健比(%)を求め比較検討した.統計処理ソフトはSPSS15.0Jを使用し、一元配置分散分析(対応あり)にて有意水準5%未満を有意差があるとした.調査期間は2006年1月から2008年5月とした.

【結果】体重比は、膝伸展・屈曲ともに術前に比べ術後高値を示し、180度/秒での健側膝屈曲を除いては術前と術後5ヶ月で差がみられた.患健比は、膝伸展で術前・術後4ヶ月・5ヶ月の順に60度/秒で75.27±19.54、72.34±12.82、79.5±13.90、180度/秒で79.55±19.34、75.55±11.70、81.52±14.05と推移し、共に術後4ヶ月と5ヶ月で差がみられた.膝屈曲では、術前・術後4ヶ月・5ヶ月の順に60度/秒で74.95±19.50、82.89±14.34、85.82±12.51と推移し、術前と術後4ヶ月・5ヶ月で差がみられた.180度/秒では、78.14±21.94、85.23±12.50、85.70±11.87と推移し、各間で差はみられなかった.

【考察】今回の研究では、術後の患側・健側体重比が角速度60・180度/秒ともに術前に比べ高値を示し膝伸展・屈曲ともに筋力の回復がみられ、受傷後に健側は不安定な患側に合わせてその活動レベルを下げていたことが示唆された.また、膝伸展筋力患健比は術後5ヶ月で60度/秒で79.5%、180度/秒で81.5%、膝屈曲筋力患健比は術後5ヶ月で60度/秒で85.8%、180度/秒で85.7%に達し、良好な結果が得られたと思われる.この要因として、現在当院の術後理学療法では、身体正中軸の再獲得を目的に膝伸展筋単独の強化よりもスクワットなど荷重下での体幹・下肢機能の繋がりを重視したプログラムを積極的に行っている.このことが採取した半腱様筋腱による膝屈曲筋力低下を最小限にとどめ、効果的な膝伸展・屈曲筋力の回復に繋がったと考える.
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© 2009 日本理学療法士協会
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