理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-438
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骨・関節系理学療法
大腿骨頚部骨折患者における術後在院日数の関連因子
近藤 淳岡本 賢太郎井上 宜充田村 拓也中谷 陽子宮地 竜也山本 和良
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抄録
【目的】近年、急性期病院において大腿骨頚部骨折術後の早期リハビリテーション、早期退院がすすめられ、クリティカルパスを導入している病院も少なくない.しかし症例によってリハビリテーションの進行が様々である.今回、我々は大腿骨頚部骨折患者における術後退院までの日数に関係のある因子について調査したので報告する.

【対象】2008年3月から2008年9月までに大腿骨頚部骨折に対し手術施行された患者18名(80.1±11.9歳:56~97歳、男性3名、女性15名)を対象とした.術式は大腿骨人工骨頭置換術12例、ハンソンピン6例であった.骨折型はGarden stageI:3例、stageII:5例、stageIII:3例、stageIV:7例であった.本調査はヘルシンキ宣言に基づき行われた.

【方法】術後退院までの因子検討のために、手術から退院までの日数(以下ENT)、入院から手術までの日数(以下PRO)、手術から起き上がり、立ち上がり、移乗、平行棒歩行の各基本動作が監視で可能になった日までの日数(以下SIU 、STU、TRF、GAT)、年齢、骨折型、退院時FIM(Functional Independence Measure)総得点、男女、術式を調査した.ENTと男女、術式以外の各パラメーターとの相関を検討した.男女、術式のみ群分けしそれぞれの項目に関し有意差を検討した.相関についてはSpeaman順位相関係数検定(p<0.05)、有意差についてはMann-Whitney検定(p<0.05)で判定した.

【結果】各パラメーターの平均値はPROが5.6±2.8日、SIU が6.2±4.6日、STUが7.1±4.5日、TRFが7.7±4.9日、GATが8.6±5.8日、ENTが34.8±16.8日であった.ENTと正の相関が認められたパラメーターはPRO(r=0.53)、SIU(r=0.5)であった.STU、TRF、GAT、年齢、骨折型、退院時FIM総得点との相関は認められなかった.ENTにおける男女、術式の有意差は認められなかった.

【考察】今回の結果から、術後在院日数には手術時期と離床時期が関連していた.手術時期に関しては、術前の廃用性障害が術後在院日数に影響があることが考えられる.早期に手術を施行し術前の廃用性障害を最小限に抑えることが、早期退院へつながると思われる.同時に廃用性障害に対する術前リハビリテーションが、早期退院のために重要であることも考えられる.離床時期に関しては、臥床による廃用性障害、合併症等の因子が在院日数に影響があることが考えられる.他の基本動作とは違い、起き上がりのみ術後在院日数と相関が得られたことは、体幹機能の影響が強いことが示唆される.また起き上がり以外の下肢に荷重する基本動作は、荷重時痛等の要素が関与した可能性がある.これらから早期退院のためには、早期手術、術前リハビリテーション、早期離床、体幹機能へアプローチが重要であると考えた.
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© 2009 日本理学療法士協会
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