理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-457
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骨・関節系理学療法
対麻痺者におけるFESローイングマシンの使用経験
佐藤 峰善松永 俊樹三澤 晶子畠山 和利千田 聡明島田 洋一巌見 武裕宮脇 和人
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抄録

【目的】対麻痺者にとって機能的電気刺激(以下FES)ローイング・エクササイズはフィットネス、上下肢のトレーニングに有益であり、筋萎縮予防、下肢静脈還流改善なども期待できる.本研究の目的は、対麻痺者にFES-ローイングマシンの利便性およびFESローイング・エクササイズによるフィットネス効果について検討することである.
【対象および方法】症例は55歳の男性でT10 破裂骨折による不全対麻痺 (Frankel C)である.FES-ローイングマシンは、電動リフトアップ機構により車いす座面と同じ高さに調節可能で、跳ね上げ式の肘掛け(全荷重が可能)、可動式の背もたれを設置し、対麻痺者が乗り移りやすい構造となっている.電気刺激装置(ダイナミッドDM2500)は2チャンネルのため、2.75”×5”の粘着式表面電極を用いて一側の膝伸展筋・屈曲筋を刺激し、両側刺激のために2台使用した.刺激装置の刺激スイッチはハンドルバーに設置し、刺激のタイミングは、大腿四頭筋刺激をflexed ready position~drive phase、ハムストリングス刺激をpull phase~recovery phaseとし、症例自身がスイッチを操作した.膝屈伸筋群刺激を併用したFESローイング・エクササイズを1日1回20分間(週5日間)施行し、4週間継続させた.評価項目は本装置と車椅子間の移乗性、装置の操作性、および最大酸素消費量とした.移乗性については安全性を含め理学療法士がエクササイズの期間評価した.装置の操作性については足部のベルト固定、シートブレーキ、表示モニタなどについて全く使えない(0)~かなり楽に操作できる(4)の5段階評定を質問紙法によりエクササイズ終了後に実施した.また呼吸代謝計測装置K4b2を用いてエクササイズ期間の前後に酸素摂取量を測定した.なお本症例には研究の目的と内容を説明し同意を得た.
【結果】本症例は一側の肘掛を跳ね上げ、車椅子から自力でマシン・シートに移乗し、足部をベルトで固定し、ローイングを実施できた.移乗性については概ね良好で、転倒しそうになる場面もなかった.装置の操作性についても良好であった.練習開始前の酸素摂取量は34.4 mL /kg/minであり、4週後には38.9 mL /kg/minであった.
【考察】FESローイング・エクササイズの臨床報告によると36名の対麻痺者を対象とした3ヵ月間のFESローイング・エクササイズを施行し、最大酸素消費量、総ローイング距離が有意に改善し、対麻痺者の心血管系のフィットネスに有用であったことが述べられている.本症例でも4週間のエクササイズで最大酸素消費量が約13%向上したことから、対麻痺者のフィットネス向上の一手法になり得る.

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© 2009 日本理学療法士協会
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