理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-344
会議情報

骨・関節系理学療法
変形性股関節症患者における大腿四頭筋萎縮と膝伸展筋力との関連
―健常者との比較―
福元 喜啓大畑 光司塚越 累木村 みさか真多 俊博市橋 則明
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】変形性股関節症(Hip Osteoarthritis,以下股OA)患者では,股関節周囲筋力のみでなく膝伸展筋力にも筋力低下が認められることから,膝伸展筋力の評価やトレーニングも重要となる.股OA患者における膝伸展筋力の低下には大腿四頭筋の萎縮が関与するが,大腿四頭筋萎縮の程度に見合った筋力低下が生じているかについては定かではない.超音波法を用いた筋厚測定は筋萎縮状態を簡便に調べることが可能であり,近年,臨床でも多く使用されるようになった.本研究の目的は,股OA患者の大腿四頭筋の筋厚測定から筋力の予測値を算出し,実際の筋力と比較することにより、筋力に対する筋萎縮の寄与について明確にすることである.
【方法】対象は,健常女性15例(平均年齢63.1±7.0歳,以下健常群),片側の股OA女性患者19例(平均年齢61.4歳±6.4歳,以下OA群)とした.患側の股関節以外に整形外科的または神経学的疾患を有する症例は除外した.両群間で年齢に有意差はなかった.すべての対象者には研究内容について説明を行い,同意を得た.健常群では右側,OA群では両側の大腿四頭筋の筋厚および膝伸展筋力を測定した.膝伸展筋力の測定にはHand-held Dynamometer(アニマ社製)を使用し,股,膝関節屈曲90°の端座位での最大等尺性筋力(Nm)を測定した.筋厚測定には超音波診断装置(東芝メディカル社製)を用い,測定肢位は安静な背臥位とした.測定部位は上前腸骨棘と膝蓋骨上縁を結んだ線上の遠位1/3から外側3cmの外側広筋上とした.統計学的検定として,対応のないt検定を用いOA群と健常群の筋力値,筋厚を比較した.その後,健常群において単回帰分析を使用し,筋力値を従属変数,筋厚を独立変数とした一次回帰式を求め,OA群の筋厚を健常群の一次回帰式に代入し,予測筋力値を算出した.得られた予測筋力値と実測した筋力値を対応あるt検定を用いて比較した.
【結果】OA群の筋力値は患側(56.6±19.0Nm),健側(79.2±22.3Nm)ともに,健常群(96.2±28.6Nm)よりも有意に低い値を示した(p<0.05).同様に,OA群の筋厚は患側(2.05±0.46cm),健側(2.58±0.33cm)ともに,健常群(2.81±0.39cm)と比較し有意に低値を示した(p<0.05).健常群の筋厚による筋力の予測式(筋力値=42.5×筋厚-23.0,p<0.05)に,OA群の筋厚を代入して得られた予測筋力値は,患側(64.0±19.7Nm)では実測した筋力値より有意に高く(p<0.05),健側(86.6±13.8Nm)では実測筋力値より高い傾向にあったが有意差はなかった(p=0.07).
【考察】筋力低下には筋萎縮のほかに神経性因子の低下も関与する.本研究の結果より,股OA患者では患側,健側ともに大腿四頭筋の筋萎縮により膝伸展筋力低下が生じるが,患側では筋萎縮だけでなく神経性因子の低下にも影響を受けていることが示唆された.
著者関連情報
© 2009 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top