理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-425
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骨・関節系理学療法
矢状面における立位時の骨盤偏位量と歩行時の足関節モーメントの関係
清水 暁彦本島 直之仲保 徹長岡 麻由子角本 貴彦
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キーワード: 立位, 歩行, 足関節
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抄録
【目的】
姿勢・動作からメカニカルストレスを推測することは治療展開をする上で重要である.さらに、姿勢評価結果から動作の特徴が明確にできれば、より的確なアプローチが可能になる.そこで、姿勢観察の指標とすることが多い立位時の矢状面骨盤偏位量と、歩行動作の特徴について検証することとした.
本研究の目的は、矢状面における立位時の前方への骨盤偏位量と歩行時の足関節モーメントの違いについて検討することである.

【方法】
対象は本研究の目的を説明し同意を得られた健常成人男性3名(平均年齢25歳、身長174.6±3.1cm、体重70.7±7.0kg)である.
計測は3次元動作解析装置VICON MX(VMS社製)と床反力計(AMTI社製)を用いて、サンプリング周波数100Hzとした.被験者にマーカ(臨床歩行分析研究会推奨DIFF15)を貼付し静止立位と歩行動作4施行を行った.股関節中心、外果の位置座標から姿勢分類を行い、下肢関節モーメントとの関連性を比較した.姿勢分類は外果の位置座標から鉛直方向へ基準線をとり、股関節中心の位置座標との関係と、体幹傾斜角から分類を行った.股関節中心の位置を広義に骨盤の位置とし、被験者3名を前方への骨盤偏位量が大きく、体幹傾斜角が大きい順にA,B,Cとした.歩行動作は歩き始めから4歩目の1歩行周期を計測した.
3被験者の比較には正規化された各々4施行分の下肢関節モーメントを用い、被験者間の特徴を比較し検討を行った.


【結果】
足関節背屈モーメントのピーク値は被験者A,B,Cの順で大きく、足関節底屈モーメントのピーク値は被験者B,C,Aの順で大きかった.立脚初期から足関節底屈モーメントのピーク値に至るまでの間、足関節底屈モーメントのグラフの傾きは被験者C,B,Aの順で大きかった.

【考察】
今回の検討では、前方への骨盤偏位量が大きい被験者ほど足関節背屈モーメントのピーク値は大きかった.また、足関節底屈モーメントは前方への骨盤偏位量の大きさの順とは関係なくピーク値に差が生じていた.しかし、立脚初期から足関節底屈モーメントのピーク値に至るまでの間、前方への骨盤偏位量の大きい被験者ほど底屈モーメントが小さい状態で立脚中期へ移行していた.これは、前方への骨盤偏位量が大きければ立脚初期で足関節背屈モーメントが大きく、前方への骨盤偏位量が小さければ立脚初期で足関節背屈モーメントが小さいということである.3被験者において、立位時の前方への骨盤偏位量と歩行時の足関節モーメントは互いに影響を及ぼしうると考える.
これらは立位姿勢と歩行動作の関連性を示唆する1つの結果であり、今後被験者数を増やし、さらなる検討が必要である.

【まとめ】
矢状面において立位時の骨盤偏位量の異なる3被験者の歩行時足関節モーメントを比較検討した.結果、足関節モーメントに特徴的な違いが見られた.
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© 2009 日本理学療法士協会
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