抄録
【はじめに】
運動は、最大酸素摂取量や骨格筋量の増加、さらにはADL、QOLの改善などをもたらすと考えられており、透析患者においても同様の効果が期待される.しかし、週3回の透析による時間的制約や合併症等により、実際は定期的な運動を行うことが困難である場合が多く、運動継続率は著しく低いと報告されている.
そこで当院では、多職種が協業し包括的腎臓リハビリテーション(以下、リハ)を展開しており、そのひとつとして、外来透析患者に対する運動の習慣化に向けた取り組みを行っている.今回、透析患者における運動の継続状況を調査し、リハの効果を検討した.
【取り組み】
疾患指導や栄養指導等に併せて、透析患者の体力特性や運動の必要性などについて説明し、まずは運動に対する動機付けを行っている.その後、移動レベル及び認知レベル別での体力評価や心身機能評価を行い、個別プログラムを作成し、透析前の時間を活用した監視下での運動、または自宅での運動指導を実施している.また、定期的に評価を行うことで、対象者に運動効果をフィードバックし運動継続のための動機付けを行っている.
【対象】
平成20年4月時点で当院にて外来透析を実施中であった透析患者48名中、運動指導を実施した30名(男性21名 女性9名、平均年齢71.4±9.8歳)を対象とした.
【方法】
平成20年4月から10月までの運動の継続状況を調査した.評価項目としては、開眼片脚立位時間、10m全力歩行時間、6分間歩行距離、最大一歩幅、Timed Up and Go Testを測定した.対象者には本研究の目的を説明し、同意を得た上で行った.
【結果】
期間内で運動継続が可能であった例は19名(63.3%)であった.やむなく疾患増悪などにより一時運動中断せざるを得なかった7名(23.3%)を除き、運動が定着しなかった例は4名(13.3%)にとどまった.運動継続が可能であった例においては体力の改善傾向を示し、評価項目によっては有意差をもって改善を認めた.
【考察】
運動指導を実施した透析患者の6割以上が、運動の継続が可能であり、いずれも体力面の維持、改善を認めた.個別プログラムを作成し定期的に評価結果をフィードバックし、運動に対する動機付けに努めたことで、運動効果も実感でき、習慣化に至ったと考える.今回、限られた時間での運動であっても、継続することで体力が向上できたため今後も、運動の指導に至っていない患者に対しても、運動習慣が定着できるよう継続してアプローチしたい.