理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-546
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内部障害系理学療法
心臓外科術後リハビリテーション遅延の指標と成り得る因子の検討
―術後のリハビリテーション標準プログラム妥当性の検証において―
北村 千恵岩佐 優季中原 大輔白石 和也宮原 拓也前田 伸悟山口 賢一郎濱野 祐樹田中 麻衣子
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抄録
【目的】当院では、リハビリテーション(以下リハ)の質の安定化のために、標準プログラムを作成し、実施している.心臓外科術後患者に対しても標準プログラムにてリハを進めているが、様々な因子によりリハ進行に遅れがみられることがある.今回、当院における標準プログラム妥当性の検証において、術後リハで遅延の可能性のある患者の特徴を捉え、リハ介入の指標とするため検討を行った.なお、以下に報告することは、ヘルシンキ宣言に沿っている.

【方法】対象者は、当院で2007年8月から2008年9月に開心手術を受けた患者(冠動脈バイパス術50例、弁形成・置換術18例、冠動脈バイパス術+弁形成・置換術4例)の計72例(男性55例、女性17例、年齢67±8.5歳).術後リハ進行表から一日でも遅れがみられたものを遅延群と定義し、リハ順調群(26名)と遅延群(46名)に分けて比較検討した.調査方法は、診療録より後方視的に調査を行い、検討項目は、性別、年齢、身長、体重、術前Barthel Index(以下B.I)、 NYHA、術前LVEF、術前血液データ(BUN、Cre、Hb、TP、CRP)、透析の有無、手術種類、冠動脈病変数、緊急度、手術時間、人工心肺装着時間、大動脈遮断時間、出血量、術後最終バランスとした.統計学的処理は、SPSSを用い、2群間の平均値の比較に対して、独立したt検定、Mann-Whitney検定、名義尺度の関連性に対してカイ2乗独立性の検定を使用した.その結果、有意水準0.05以下を満たした因子を独立因子とし、順調群と遅延群を従属因子として多重ロジスティック解析を実施した.

【結果】順調群と遅延群の2群間の比較において、人工心肺装着時間(順調群107±22.4分;遅延群140±53.0分、p<0.05)、大動脈遮断時間(72.0±15.1分;95.0±39.5分、p<0.05)、術前LVEF(62.2±10.9%;51.2±13.7%、p<0.01)、Hb(13.5±2.09dL;12.0±1.75dL、p<0.01)、術前B.I (p<0.01)で有意差がみられた.症例数の少なかった緊急手術(4例)、冠動脈バイパス術+弁形成・置換術後患者(4例)に関しては、全例遅延群であった.多重ロジスティック解析にて、術前LVEFとHbが有意な変数として選択され、これらの因子で構築されたモデルは順調・遅延を83.0%の的中率で判別可能であった.

【考察とまとめ】多重ロジスティック解析の結果より、遅延の指標と成り得る因子として、術前LVEF、Hbが挙げられた.また、2群間の比較より術前B.I 、人工心肺装着時間及び大動脈遮断時間において有意差が見られた.この結果から、これらの因子、及び緊急手術、冠動脈バイパス術+弁置換術症例に着目して標準プログラムの検討、細分化につなげていく必要があると考える.また、これらの因子のより具体的な数値化を今後の検討課題とする.
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© 2009 日本理学療法士協会
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