理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-505
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内部障害系理学療法
整形外科疾患を合併した糖尿病患者の運動療法
松山 博文今井 保下之園 英明加藤 裕子杉原 建介面田 真也丹羽 徹
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キーワード: 糖尿病, 運動療法, 合併症
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抄録
【はじめに】
糖尿病の治療は、薬物療法、食事療法および運動療法である.運動療法には、代謝機能の正常化、血糖値のコントロール、インシュリン感受性の向上などの多くの効果があるとされているが、一方では、合併症を有し運動が困難な症例には適さない一面もある.今回我々は、整形外科疾患を合併した糖尿病患者4名に対し、痛みに対する治療を併用しながら運動療法を試みた結果、運動負荷が可能であったので以下に報告する.
【症例紹介】
症例は2007年8月1日から11月30日までに糖尿病で入院し、整形外科疾患を有し、運動療法が処方された4名の患者である.
症例1:67才、女性、治療期間8/1~8/31、運動療法が処方されたが腰痛のため歩行が困難な状態であった.腰痛に対して温熱療法と徒手的治療を行い腰痛が軽減し、歩行練習が可能となった.退院時には300mの歩行が可能であった.
症例2:71才、女性、治療期間9/28~11/1、歩行練習が処方されたが、右膝変形性関節症による疼痛が強く、歩行は要介助レベルであった.右膝関節の疼痛に対し徒手的治療を行った結果、杖歩行が可能になった.歩行距離も10mから100mまで改善した.
症例3:82才、女性、治療期間10/10~11/3、歩行練習が処方されたが、両膝変形性関節症による疼痛が強く、歩行が困難なレベルであった.両膝関節の疼痛に対し徒手的治療を行った結果、歩行が可能になった.歩行距離も改善した.
症例4:76才、女性、治療期間10/29~11/8、自転車エルゴメーター練習が処方されたが、両膝変形性関節症による疼痛が強く、困難なレベルであった.両膝関節の疼痛に対し温熱療法と徒手的治療を行った結果、自転車エルゴメーター練習が可能になった.
全症例とも、糖尿病治療が順調に経過し退院となった.また、全症例とも退院時の疼痛は軽減していた.
【まとめ】
糖尿病における運動療法の重要性は周知されているが、薬物療法や食事療法と異なり、阻害因子の影響により全患者に施行されることは困難である.しかし、阻害因子を改善することにより、運動療法が可能になる症例の存在も、今回の経験で明かとなった.また糖尿病の運動療法は、動作レベルの改善が目的ではなく、その動作を長時間行うことに目的があるため、単なる整形外科疾患の治療とは異なることも再認識できた.今後、他の阻害因子に関しても積極的に取り組んでいきたい.
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© 2009 日本理学療法士協会
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