理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-214
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生活環境支援系理学療法
主介護者に対する介護力評価票の開発とその有用性の予備的検討
氷見 昌美臼田 滋白倉 賢二
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抄録
【目的】要介護者が在宅生活を続けるためには、要介護者だけでなくその介護者や家族に対しての関わりも重要である.本研究では主介護者(以下介護者)の介護力を在宅専門職はどのように捉え、評価しているか、その視点を明らかにすることを目的に調査を行った.その結果から介護力評価票(以下評価票)を作成し、その有用性を検討するために介護者を対象とした予備的検討を行ったので報告する.
【方法】介護力評価の視点に関するアンケート調査は訪問看護師(以下Ns)66名、在宅介護支援専門員50名、訪問リハ従事の理学療法士77名、作業療法士23名、言語聴覚士8名を対象に平成20年7月郵送法にて実施した.内容は介護者の介護力を評価する上で関係する項目の重要性と優先順位、介護者に関わる頻度や意図について問うものであった.その結果をもとに介護者の介護状態や状況に関する22項目と年齢や介護期間等の属性に関する6項目計28項目からなる評価票を作成した.次にその評価票を用いて介護者10名と担当Nsを対象に平成20年10月に調査を実施した.介護者は4段階自己評価および介護負担感の評価としてZarit介護負担尺度(日本語版)を面接法にて実施した.Nsは「わからない」を含む5段階評価とした.介護者1名につきNsは2名ずつ評価し、検者間信頼性を検討した.介護者属性は女性9名男性1名、平均年齢65.9歳(48-81歳)、平均介護期間6年8か月(1年5か月-20年)であった.対象者には研究の主旨を説明し同意を得て実施した.
【結果】アンケート調査の回収率は82.6%、有効回答数185名であった.介護力を評価する上で「重要」と9割以上が回答した項目は「介護者の健康状態」「要介護者の病気に対する理解」「住環境・介護環境」「介護に対する意欲」「家族の介護協力の有無」「ストレス発散・対処方法の有無」「介護者と家族の関係」「経済的な事情」「社会資源の活用意欲・適切な利用」「介護者の年齢」の10項目であった.評価の優先順位において職種によって違いはみられたが統計上有意な差は認められなかった.Nsの検者間信頼性は級内相関係数0.48であった.一致率をみると「介護者の健康状態」「介護への意欲」は80%の一致であるのに対して「経済的な事情」は10%であった.また、介護者とNs間の一致率をみると「要介護者の病気に対する理解」は0%であった.全体的に介護者の自己評価はNs評価より高くなる傾向であった.介護負担感と介護者及びNsによる介護力評価との相関係数(Spearman)は-0.06~-0.36であった.
【考察】今回の調査では開発した評価票の信頼性は不十分であり、介護負担感との関連性は低い結果となった.今後、さらに対象数を増やして調査を継続し、これらを詳細に分析する必要があり、評価票の信頼性や妥当性あるいは有用性を検討していきたい.
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© 2009 日本理学療法士協会
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