理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-576
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教育・管理系理学療法
若手理学療法士を対象としたPBLの試み
河西 理恵袴田 さち子丸山 仁司松田 祐一
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キーワード: PBL, 教育手法, 卒後教育
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抄録
【目的】昨今、養成校の急増などにより、若手理学療法士の質の低下や能力差といった問題が表面化しており、卒後教育の重要性が指摘されている.今回、卒後教育におけるPBLの効果を検証する目的で、若手理学療法士を対象に、院内教育におけるPBLの導入を試みたので、報告する.

【方法】E病院の理学療法士で、臨床経験が2~3年以内であることを条件に、PBLの受講希望者を募った.その結果、7名の理学療法士の協力を得た(男性3名、女性4名、平均年齢:25.3歳、臨床経験:2年:6名、3年:1名).実施に際し、参加者全員に趣旨を説明し、同意を得た.平成20年6月~7月にかけ、週1回の頻度で3つのシナリオに関するPBLを6回実施した.なお、実施期間中はE病院の教育担当である理学療法士1名が、オブザーバーとして参加した.PBLの学習効果を示す目的で、実施前後に学力試験を行った.問題は全て記述式とし、知識に基づき障害のメカニズムについて解答するものと、問題点の原因となる仮説を立案する臨床推論能力を問うものとした.また、PBL終了時に、満足度、自己学習への影響、グループ学習スキルの向上、ファシリテーターに対する評価、PBLは卒後教育として有効かどうかなどを問う4件法のアンケートを行った.質問に対する答えを、「全く思わない=1点、あまり思わない=2点、やや思う=3点、そう思う=4点」とし、各項目の平均値を求めた.さらに、終了から3か月後に、PBLの影響や利点などを問う記述式のアンケートを行った.

【結果】実施期間中を通じて、参加者のドロップアウトや欠席などはなかった.学力試験の結果は、PBL実施前の平均点が39.9点であったのに対し、実施後は75.4点であり、実施前後で有意差が見られた(P=0.000).終了時に行ったアンケートでも、満足度の平均値:3.97、自己学習:3.93、グループ学習スキル:3.5、ファシリテーターの評価:4、卒後教育としてのPBLの有効性:4といづれも高い評価を得た.3ヶ月後のアンケートでは、今回のPBLをきっかけに、参加者全員による自主的な勉強会が結成され、PBLも継続されていることが報告された.また、PBLの利点として、スタッフ間のコミュニケーションがよくなった、仲間同士なので、発言や質問がしやすい、自己学習が深まったなどの意見が多かった.

【考察】今回の研究は小規模だが、院内教育におけるPBLの様々な可能性を示唆できたと考える.特に、知識や思考力の向上に限らず、PBLがスタッフ間のコミュニケーションの活性や、自己主導型学習および自己効力感の育成に貢献する可能性を示すことができた.今後、さらに対象者を増やした分析が必要と考える.
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© 2009 日本理学療法士協会
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