理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-577
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教育・管理系理学療法
当院新人セラピストへの危険予知訓練(KYT)の実施について
渡辺 有亮
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キーワード: 安全対策, 危険予知, 新人
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抄録
【はじめに】リハビリテーション医療においては、近年セラピスト養成校の増加等により、職種経験年数の浅いセラピストが急速に医療現場に増えつつある.当院リハビリテーション部門においても例外ではなく、毎年4月には、新卒のセラピストが複数入職し、今や卒後1~3年目のセラピストが全体の半数以上を占めるまでになった.これは、安全対策の観点から言えば、非常に重大な問題を抱える.特に新卒で入職した者にとっては、臨床経験がなく、どのような状況からインシデント・アクシデントへと繋がっていくのか、という危険を予知する能力が乏しく、事故に関与する可能性が高いと思われるからである.そこで当院リハビリテーション部門では、平成20年度から卒後1年目で新規入職したセラピストを対象に危険予知訓練(KYT)を複数回実施し、事故の低減を目指そうという試みを開始した.この試みの実施前、実施後のインシデント・アクシデントの発生件数等を比較して有用性等について検討した.尚、本研究の発表に当たっては、院内倫理委員会の審査を経るとともに、関係者からの承諾を得ている.

【方法】平成18、19、20年の3ヵ年の、それぞれ4月1日~9月30日の間に当院で発生したインシデント報告事例のうち、卒後1年目のセラピスト(PT、OT、ST)が当事者となったものを集計し、その年度ごとの発生件数および1人あたりの発生件数を比較した.尚、各年度の卒後1年目セラピストの数は平成18年度が7人、19年度が8人、20年度が10人であった.また、平成20年度の新卒セラピストにのみ,平成20年4月1日に新入職員オリエンテーションの一環として、管理職らによるKYTを実施した.

【結果】発生総数は平成18年度が7件、19年度が10件、20年度が4件であった.1人あたりの発生件数は平成18年度が1件、19年度が1.25件、20年度が0.4件であった.内容については、「転倒・転落」が平成18年度は3件、平成19年度は7件、平成20年度は3件であった.「チューブ類の誤抜去・切断」が同様に、それぞれ4件、0件、0件であった.「その他」が同様に、それぞれ0件、3件、1件であった.

【考察とまとめ】発生総数および1人あたりの発生件数は、どちらも平成20年度は前年、前々年度に比して減少していた.KYTによって、新人は入職初期から事故回避に取り組む意識が持てるようになり、インシデント発生の低減に寄与することが出来たと思われる.しかし、今回の調査は各年度の上半期のみの件数比較であり、KYT実施によって効果の持続性がどの程度あるのか、また、どの程度の頻度でこのような訓練を実施していけば最適か、といったことを示唆するデータが得られていない.今後は通年にて調査継続し、データを蓄積し、因果関係をさらに詳しく分析していくことが課題である.
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© 2009 日本理学療法士協会
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