理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-021
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一般演題(ポスター)
姿勢変化による側腹筋の筋厚について
超音波診断装置での画像解析を用いた検討
糸谷 圭介大谷 啓尊前田 慶明加藤 順一畑中 めぐみ筏 美智
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抄録
【目的】
近年、超音波診断装置での画像解析を用いた筋厚測定が行われるようになり、側腹筋の超音波画像解析は容易であることが報告されている。側腹筋は外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋にて構成されており呼吸や体幹の運動に関与している。特に腹横筋は腰椎の支持性にも関わっており体幹運動に先駆けて腹腔内圧を高め、運動準備状態を形成するメカニズムがあるといわれている。本研究の目的は姿勢変化による側腹筋の筋厚変化について比較検討することである。
【方法】
健常男性10名(平均年齢 26.4±2.4歳)を対象とした。測定には超音波診断装置(PHILIPS HD11XE)、リニアプローブ(3.0~12.0MHz)を使用した。測定はBモードで行った。測定筋は外腹斜筋(以下EO)、内腹斜筋(以下IO)、腹横筋(以下TA)とした。測定姿勢は背臥位、背もたれ座位(骨盤前傾位、骨盤中間位、骨盤後傾位)の4パターンで実施した。安静時呼気時(以下Rex)と最大努力呼気時(以下MEE)の筋厚を各々3回測定した。口頭にてRexでは“普段通りの呼吸をしてください”、MEEでは“できる限り、息を吐ききってください”と指示した。測定部位は右側腹部とし、前腋窩線上の肋骨下縁と腸骨稜との中央部とした。プローブ長軸と前腋窩線上とが直交し、プローブの中央部が前腋窩線上となるように実施した。RexとMEEでの筋厚変化率は百分率({MEE/Rex}・100)を用いて算出した。姿勢別でのEO、IO、TAの筋厚変化とRex・MEEでの筋厚変化率の比較は一元配置分散分析、Games-Howell法にて多重比較を行った。有意水準は5%未満とした。
【説明と同意】
対象者には本研究の目的を本院の倫理委員規約に基づき、口頭にて説明し、同意を得て実施した。
【結果】
姿勢別での筋厚変化は、Rex時でのTAにて背臥位と骨盤前傾位(p=0.021)、背臥位と骨盤中間位(p=0.003)、背臥位と骨盤後傾位(p=0.034)で有意差を認めた。特に背臥位と骨盤中間位の有意差が著明であった。TA筋厚は背臥位で最も低値であり、骨盤後傾位で最も高値であった。その他の姿勢でのRex時、MEE時の各筋に有意差は認めなかった。RexからMEEでの筋厚変化率ではTAにて背臥位と骨盤前傾位(p=0.009)、背臥位と骨盤中間位(p=0.03)にて有意差を認めた。特に背臥位でのTAは最も増加率が高く200%の変化を認めた。他の姿勢でのTAは後傾位172%、中間位163%、前傾位156%と変化した。EO、IOでの筋厚変化率は有意差を認めなかった。
【考察】
EOやIOは呼吸運動時の補助筋などで知られており、TAは腰部の支持性や運動性に関与している。Rex時でのEOやIOは姿勢による変化は認めなかったものの、TAは姿勢別で差を認めた。TAはRex時の背臥位にて最も低値であり骨盤中間位と著明な差を認めた。背臥位では姿勢を抗重力位にて保持する必要がないためだと考える。骨盤後傾位は腹筋群の筋活動が減少しやすく、骨盤前傾位では脊柱の伸展が優位となり易くなるため、骨盤中間位が姿勢の保持に最も関与しているのではないかと思われる。筋厚変化率では背臥位にてTAの変化率が最も高く、収縮が最も得られやすい姿勢であると考える。TAは腹筋群の中でも特に腹腔内圧を高めるために作用する。背臥位では腹腔内圧が高まりやすくなるため、呼気時においてTAの筋厚変化率が増加したと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
これらより呼吸運動を使用した方法でのTAの収縮促通姿勢は、座位よりも背臥位のほうが良いと考えられる。今回の結果から、腰部の支持性が低下した患者に対して側腹筋の評価が理学療法アプローチにつながる可能性があると思われる。
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© 2010 日本理学療法士協会
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