理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O2-124
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一般演題(口述)
変形性膝関節症者が行う代償的な降段動作が膝関節負担に与える影響について
長谷川 正哉金井 秀作島谷 康司沖 貞明大塚 彰小野 武也梅井 凡子
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抄録
【目的】変形性膝関節症(以下OA)では疼痛,筋力低下およびROM制限をはじめとする機能低下がみられ,さまざまな日常生活動作が制限される.特に膝関節深屈曲を伴う動作が障害されやすく,移動を伴う動作では階段昇降がしばしば困難となる.臨床の場面では膝関節の負担を軽減する目的で,疼痛側を先導脚とした二足一段降段を行うよう指導する事が多い.しかし,OA者では両側性の病態を示すものが多く,先導脚の負担のみでなく支持脚側の膝関節保護の検討も重要である.そこで,我々はOA者が行う代償的な降段動作である側方降段,および後方降段に着目し,各降段動作中における支持脚および先導脚の関節負担について比較・検討する事を目的とした.
【方法】対象はOA女性 7名(平均±標準偏差:年齢68.4±7.8才,身長151.2 ±8.4cm,体重61±7.8kg)とした.OA者は近医にて変形性膝関節症と診断され,保存療法にて経過の良好なものであった.Modified Kellgren and Lawrence Scale1~2,JOAグレードで右85.7±6.7点 ,左80.0±5.0点,他動的な膝関節屈曲角度は右130.0±10.0度,左126.4±14.1度であり,全員独歩可能であった.実験条件として踏面30cm,蹴上15cmの階段3段を設定し,前方降段(Forward Descend-FD),側方降段(Sideway Descending-SD),後方降段(Backward Descend-BD)中の膝関節間力を三次元動作解析装置VICON512を用いて計測した.データの解析および抽出にはGsport社製ARMOを用いた.データ抽出箇所として支持脚により体重を支持し降下する時期(以下,降下支持期)に発生する膝関節間力の最大値(Maximum Knee Joint Force:KJF-Max),先導脚着地時の緩衝を行う時期に発生する関節間力(Knee Joint Force at Loading Response :KJF-LR)のピーク値を抽出した.本研究における支持脚,先導脚の規定については,原則として診断側を先導脚としたが,両側性の変形性膝関節症の場合には,支持降下時により被験者が安楽な側の下肢を支持脚とした.統計検定には一元配置の分散分析およびSheffe法による多重比較を行った.なお,統計学的有意水準を5%とした.
【説明と同意】被験者には実験開始前に本研究の趣旨を十分に説明し,同意を得た後に実験を実施した.本研究はヘルシンキ宣言に基づいて実施されており,興生総合病院倫理委員会の承認を得ている.
【結果】JF-LRはFD42.35±19.67N/kg,SD27.56±4.66N/kg,BD31.43±10.62N/kgとなった.FDと比較し,SD,BDに有意な減少が認められた(p<0.01).JF-MaxはFD76.75±29.53N/kg,SD48.59±18.12N/kg,BD44.71±8.47N/kgとなった.FDと比較し,SD,BDに有意な減少が認められた(p<0.01).
【考察】本研究結果より,FDと比較しSD,BDで支持脚,先導脚の膝関節間力が減少し,OA者が行う代償的な降段動作方法による膝関節負担の軽減が認められた.膝関節間力には膝関節を跨ぐ筋の筋張力が影響する事が知られている.また,FDと比較しSD,BDでは足関節底屈および膝関節伸展モーメントが減少する事が報告されている.そのため,本研究においても膝関節伸展筋張力および足関節底屈筋張力が減少するSD,BDにて膝関節間力が減少したものと考えられた.一方,FDと比較しSD,BDにおける先導脚着地時の膝関節間力の減少が確認された.SD,BDでは股関節による降下制御が行われるとともに,踵離地が発生しないためFDと比較し広い支持基底面を保ったまま降段が可能である.このような支持脚側の関節および筋に対する要求や安定性が降下制御能に影響を与え,身体の下方への加速度が減少した結果,着地時に要求される緩衝が減少したものと考えられた.
【理学療法学研究としての意義】OA者が行う側方および後方降段時に膝関節間力が減少したことから,関節保護や除痛を目的とした降段動作としての有効性が確認された.本研究は臨床の現場において降段動作指導を行う際のエビデンスにつながるものと考える.
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© 2010 日本理学療法士協会
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