理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O2-126
会議情報

一般演題(口述)
運動器不安定症患者における運動能力と活動能力の関係
島村 亮太安彦 鉄平安彦 陽子山下 輝昭山本 真秀野口 慎二山本 純一郎根岸 志帆増田 司水野 直樹平野 正仁相馬 正之丹野 亮林 泰史
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】運動器不安定症とは平成18年に医療保険で認可された症候名であり,「運動機能低下を来す疾患患者で,高齢化によりバランス能力および移動歩行能力の低下が生じ,閉じこもり,転倒リスクが高まった状態」とされている.運動器不安定症患者に対して,安彦らは詳細に運動能力の評価を行い報告したが,活動能力との関係を報告したものはみられない.運動器不安定症は閉じこもりのリスクが高まった状態とされ,活動能力を把握することは重要である.活動能力の評価には,地域で独立した生活を営む上で必要とされる能力を13点満点で評価する老研式活動能力指標がある.老研式活動能力指標の調査や報告では,13点満点群と12点以下群に分け,運動能力を比較することが多い.そこで,本研究では,老研式活動能力指標を用いて運動器不安定症患者を13点満点群と12点以下群に分け,運動能力と活動能力との関係を明らかにした.
【方法】対象症例は当院に通院し,運動器不安定症と診断された72名(男性20名,女性52名),年齢71.9±9.6歳(平均±標準偏差),身長151.5±10.2cm,体重51.6±10.2kg,BMI22.5±3.7であった.対象症例の運動能力に関する検査は,股関節関節可動域と膝関節伸展筋力比,疼痛に関する検査はNumerical Rating Scale(以下NRS),静的バランス能力としては片脚立位時間(以下OLS),動的バランス能力としてはBerg Balance Scale(以下BBS),移動に関しては10m歩行の最小所要時間(Minimum Walking Time以下MWT)と歩数(以下STEPS),移動と動的バランス能力としてはTimed Up and Go(以下TUG)を調査・計測した.また,活動能力の評価としては老研式活動能力指標を用い13点満点で評価した.統計処理は,老研式活動能力指標「13点満点群」と「12点以下群」の2群に分け,各測定値の比較を行った.群間比較は対応のないt検定とMann-WhitneyのU検定を用いた.統計処理はSPSS ver17.0J for Winを使用し,有意水準を5%とした.
【説明と同意】すべての対象症例に本研究の目的と方法と説明し,同意の後,以下の身体計測と検査を実施した.なお,本研究は東京都リハビリテーション病院安全倫理委員会の承認を得ている.
【結果】老研式活動能力指標が13点満点群は12名,12点以下群は60名であった.13点満点群の股関節の可動域について、屈曲は103.8±13.1°(平均±標準偏差),伸展は11.7±4.7°,外転は20.9±7.8°であった.膝関節伸展筋力比は0.7±0.3%,疼痛はNRSが2.7±2.9,OLSは10.7±10.5秒,BBSは52.5±3.5点,MWTは8.5±1.4秒,STEPSは18.0±2.2歩,TUGは10.2±1.8秒であった。12点以下群の股関節の可動域について,屈曲は103.7±13.4°,伸展は9.0±8.0°外転は23.5±9.2°であった.膝関節伸展筋力比は0.6±0.5%.疼痛はNRSが4.8±3.0,OLSは8.7±10.6秒,BBSは46.1±9.4,MWTは11.5±4.4秒,STEPS は20.5±1.1歩,TUGは14.9±7.9秒であった.両群間は年齢,身長,体重,BMI,股関節関節可動域,膝関節伸展筋力比,OLSについて有意な差を認めなかった.疼痛は13点満点群で有意に低い値を認めた.MWT,STEPS,BBS,TUGでは13点満点群で有意に高い値を認めた.
【考察】老研式活動能力指標13点満点群では、12点以下群の運動能力と比較して,疼痛と移動能力,動的バランス能力に有意な差を認めた.これは,活動能力に低下のない患者は,日常的に活動していることで,運動能力が維持されていると考えられた.猪飼らは,高齢者を対象とした調査で歩行能力とバランス能力に相関関係があると報告している.本研究においても運動器不安定症患者では活動能力を維持するために必要な能力であることが示唆された.地域在住高齢者と同様に,静的バランス能力より動的バランス能力を改善するような介入が重要であると考える.さらに、疼痛を減らす介入が活動能力を維持,改善するために必要であると推測された.
【理学療法学研究としての意義】本研究により,運動器不安定症患者における活動能力と運動能力の関係を明らかにすることができた.日常の活動能力の維持には,疼痛,動的バランス能力,移動能力が影響しており,これらを考慮して運動器不安定症患者に対するエクササイズを行う必要がある.今後は,老研式活動能力指標が12点以下群に対してエクササイズを行い検証していく必要がある.
著者関連情報
© 2010 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top