理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O2-146
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一般演題(口述)
肩関節疾患を有する患者の運動学的分析
肩甲骨アライメント変位が肩関節外転運動に与える影響
徳田 一貫羽田 清貴阿南 雅也近藤 征治辛嶋 良介佐々木 誠人川嶌 眞人
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抄録
【目的】肩関節は胸郭上に浮遊する関節であり,肩甲骨の動きが肩関節に与える影響は大きいと考えられる.肩関節疾患に対する評価・治療を行う上で肩甲骨の静的アライメント変位および肩甲骨の動きが肩関節に与える影響は大きく,肩甲骨に対する評価が重要であると考える.そこで今回は,肩関節疾患を有する患者に対して左右の肩甲骨アライメント変位と肩甲骨移動量,肩関節外転運動における瞬間回転中心を計測することで肩関節疾患における運動学的特徴を比較・検討することを目的として行った.
【方法】被験者は,片側性の肩関節疾患と診断された患者16名(男性7名,女性9名,年齢60.0±7.5歳)とした.なお,両側性の肩関節疾患患者,著名な肩関節拘縮や疼痛のため肩関節外転運動が困難な患者は除外した.被験者の診断名は肩関節周囲炎9名,腱板断裂 3名,肩インピンジメント症候群4名であった.測定肢位は端坐位,座面の高さは下腿長,座る奥行きは大腿の1/2が座面の先端にくる長さ,股関節・膝関節屈曲90°,足関節底背屈0°となるように設定した.肩甲骨アライメントおよび肩甲骨移動量は両上肢下垂位の端座位にて,左右の第7胸椎棘突起(以下Th7)~下角,第3胸椎棘突起(以下Th3)~棘三角,Th3~肩峰後角の直線距離を計測し肩関節最大外転位でも同様に行った.瞬間回転中心の計測は上肢下垂位から肩関節最大外転位までの肩関節外転運動を前方よりデジカルビデオカメラにて撮影した.長さ32cm程度の棒の両端にマーカーを貼付し,第3指が棒の中点となるように第2~4指で棒を把持した.撮影した画像を画像解析ソフトImageJ(NIH製)にて,標点座標を算出し30°毎に肩関節最大外転位までの瞬間回転中心を求めた.
【説明と同意】本研究は,ヘルシンキ宣言に基づき被験者に研究内容や目的について十分説明を行い,同意を得てから行った.尚,川嶌整形外科病院の倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】肩関節外転角度は患側外転147.0±24.0°,反対側外転165.7±12.3°であった.肩甲骨アライメントは患側が反対側の肩甲骨と比較してTh7~肩甲骨下角の距離が短く患側肩甲骨が下方回旋位を呈する患者12名(以下:下方回旋位群)と,Th7~肩甲骨下角の距離が長く肩甲骨上方回旋位を呈する患者4名(以下:上方回旋位群)に分類された.さらに下方回旋位群では,肩関節外転時の上方回旋移動量が反対側に比べて増加する患者6名と低下する患者6名に分かれ,上方回旋移動量が低下する患者は上方回旋移動量が増加する患者に比べて有意に肩関節外転角度の低下が見られた(p<0.01).上方回旋位群では,反対側に比べて肩甲骨外転・上方回旋移動量の低下が見られた.肩関節外転運動時の瞬間回転中心は,反対側肩関節外転運動では肩甲帯周辺に散在するのに対して,患側肩関節外転運動では肩関節付近に収束する傾向がみられた.また,下方回旋位群で上方回旋移動量が増加する患者は肩関節付近に収束した後,下内側へ瞬間回転中心移動がみられた.
【考察】肩関節外転運動時の瞬間回転中心は,患側では肩関節に収束する傾向があり肩甲上腕関節への過負荷が生じる事が考えられる.肩甲骨アライメントは,反対側肩甲骨に比べて患側肩甲骨アライメント変位がみられた.下方回旋位群では,肩甲上腕関節が相対的に外転位となり棘上筋の筋張力低下が示唆される.そのため,Setting phaseにおける肩甲骨下方回旋運動が低下する事が考えられる.肩甲骨移動量は,下方回旋位群で肩甲骨移動量が低下する患者では肩関節および肩甲帯の可動性低下や機能低下により肩関節外転角度の低下を招き,肩甲骨移動量が増加する患者は,瞬間回転中心が肩関節から下内側方向に移動した事から肩甲骨の代償動作を呈する事が示唆された.上方回旋位群では,肩甲骨上方回旋の可動性低下によって肩甲骨移動量が低下し,肩甲上腕関節に過度な可動範囲が要求される事が示唆された.肩甲骨アライメント変位により肩関節の過剰な代償動作により,肩甲上腕リズムに破綻をきたし瞬間回転中心が肩関節周辺に収束したのではないかと推察した.
【理学療法学研究としての意義】本研究は,肩関節疾患を有する患者の肩甲骨アライメントや瞬間回転中心の左右差を比較する事で臨床において簡易的な評価の一指標となるかを目的として行った.今回の知見から左右の肩甲骨アライメントと肩甲骨移動量を評価する事で,肩関節に対する具体的な治療戦略を導くための一手段として活用できると期待される.
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© 2010 日本理学療法士協会
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