抄録
【目的】
棘下筋のカフトレーニングではセラバンドを用いた訓練などがすすめられているが、壁やベッドに肘をついた姿勢での訓練も効果が高いといわれている。
今回、肩外旋運動における姿勢の違いによる影響を、棘下筋と僧帽筋の筋電図(EMG)で比較、検討した。
【方法】
対象は運動器疾患を有しない健常男性10名とし、右側の棘下筋と僧帽筋中部線維(僧帽筋)のEMGを記録した。
運動課題は肩関節肩甲骨面45°挙上位、内外旋中間位、肘関節90°屈曲位での肩外旋等尺性運動とした。棘下筋の最大随意収縮(MVC)による筋力を測定し、運動課題の負荷抵抗はその20%とした。この課題を坐位での運動(下垂位)、坐位で体幹を前傾し肘をついた姿勢での運動(肘固定位)、パピーポジションでの運動(パピー位)の3姿勢で行い、比較した。
EMG導出は多チャンネルテレメーターシステム(WEB-1000,日本光電社製)を用いた。双極導出法で、電極間10mm、筋電図周波数帯域30~500Hzとして、筋活動電位をサンプリング周波数1000Hzで記録した。EMGよりRMS値を算出し、下垂位での肩外旋最大等尺性運動時のRMS値を1として3姿勢での各測定値を正規化し、%RMSとして表した。
【説明と同意】
なお、対象には事前に研究の目的と内容を説明し、参加の同意を得た。
【結果】
棘下筋の%RMSは下垂位で0.22、肘固定位で0.26、パピー位で0.28となった。僧帽筋は0.27、0.12、0.10であった。棘下筋はパピー位、肘固定位、下垂位の順で、僧帽筋は下垂位、パピー位、肘固定位の順で筋活動が高いという結果を得た。
【考察】
肩甲骨は体幹に筋で固定され、その固定力により肩、特に腱板の収縮力が左右されることは周知である。
結果より僧帽筋は下垂位で筋活動が高かった。肩甲骨は下垂位では上肢重により下方回旋、棘下筋の収縮により外転する。このため、これらに拮抗する作用をもつ僧帽筋の筋活動が高くなったと思われる。
また棘下筋の筋活動はパピー位、肘固定位で高かった。これは下垂位では求心位を保つために腱板の筋活動がより必要と思われたが、荷重による支持筋としての活動が優位に出現していることが考えられた。また末梢固定により純粋な棘下筋の収縮による肩外旋作用となったためとも考えられる。
以上から、同じ抵抗での運動ではパピー位や肘固定位での運動が、棘下筋に対する効果が高いといえる。また下垂位での運動はComplexとしての訓練効果があることが示唆される。
【理学療法学研究としての意義】
肩外旋運動において肘固定位やパピー位の方が棘下筋の訓練効果が高いことが示唆された。