理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O2-159
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一般演題(口述)
股関節疾患患者における歩行速度と腰椎アライメント・脚長差・下肢筋力の関連性
変形性股関節症と大腿骨頭壊死症の比較
西村 純南角 学森 公彦安藝 浩嗣新宮 信之藤田 容子秋山 治彦後藤 公志中村 孝志
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抄録
【目的】股関節疾患の股関節の変性は、歩行能力などの運動機能の低下ならびに脊柱・骨盤アライメント異常の原因となる。股関節の変性は原疾患により異なるため、原疾患により運動機能や脊柱・骨盤アライメントに差が生じると推察されるが、これらを検討した報告は少ない。本研究の目的は、1)変形性股関節症患者と大腿骨頭壊死症患者の運動機能に違いがあるかを検討すること、2)変形性股関節症患者と大腿骨頭壊死症患者の歩行速度に関連する因子が異なるかどうかを検討することとした。
【方法】対象は、変形性股関節症患者17名(男性2名、女性15名、平均年齢:59.1±8.7歳、身長:150.3±6.7cm、体重:48.5±7.0kg)と大腿骨頭壊死症患者12名(男性4名、女性8名、平均年齢:49.8±15.9歳、身長:161.3±11.4cm、体重:56.6±11.9kg)とした。歩行速度の評価として、杖などの歩行補助具を用いずに10m歩行速度を測定した。測定は2回実施し、最小値を採用した。本研究では、当院整形外科医の処方により撮影された自然立位での前額面上の全脊柱X線画像と股関節正面X線画像を用いた。腰椎骨盤アライメントの評価として、自然立位での矢状面上の全脊柱X線の画像を用いて、腰椎前弯角(LLA)および腰仙角(LSA)を計測した。LLAは、第1と第5腰椎椎体上縁のなす角とし、LSAは第1仙椎上縁と水平線のなす角とした。脚長差は股関節正面X線画像を用い、涙痕から小転子先端までの距離を計測し、患側と健側の差とした。また、患側下肢筋力として、股関節外転筋力および膝関節伸展筋力を測定した。股関節外転筋力の測定にはHand-Held Dynamometer(日本MEDIX社製)を用い、膝関節伸展筋力の測定にはIsoforce GT-330(OG技研社製)を用い、等尺性筋力を測定した。測定は2回行い、最大値を採用した。筋力値はそれぞれトルク体重比(Nm/kg)を算出した。歩行速度と各測定項目との関連の検討にPearsonの相関係数、各測定項目の両群間の比較には対応のないt検定を用いた。統計学的有意基準は危険率5%未満とした。
【説明と同意】全対象者に対し、本研究の目的と内容を詳細に説明し、参加への同意を得て実施した。
【結果】変形性股関節症患者の10m歩行速度は9.2±3.4秒、LLAは35.5±9.8°、LSAは47.5±9.8°、脚長差は14.0±9.5mm、股関節外転筋力は0.46±0.19Nm/kg、膝関節伸展筋力は1.47±0.42Nm/kgであった。大腿骨頭壊死症患者では10m歩行速度は11.7±4.1秒、LLAは31.7±8.7°、LSAは45.8±14.1°、脚長差は7.5±7.9mm、股関節外転筋力は0.52±0.31Nm/kg、膝関節伸展筋力は1.52±0.63Nm/kgであった。10m歩行速度、LLA、LSA、脚長差、股関節外転筋力、膝関節伸展筋力ともに両群間に有意差は認めなかった。また、変形性股関節症患者においては、10m歩行速度はLLA(r=0.66、p<0.01)および膝関節伸展筋力(r=-0.50、p<0.05)と有意な相関関係を認めたが、LSA(r=-0.17)、脚長差(r=0.06)および股関節外転筋力(r=-0.25)と有意な相関関係は認めなかった。大腿骨頭壊死症患者においては、10m歩行速度はLLA(r=0.14)、LSA(r=-0.32)、脚長差(r=-0.26)、股関節外転筋力(r=-0.44)、膝関節伸展筋力(r=-0.55)の全ての測定項目と有意な相関関係は認めなかった。
【考察】本研究の結果より、変形性股関節症患者と大腿骨頭壊死症患者の歩行速度、下肢筋力、股関節機能、腰椎骨盤アライメントに大きな差は認められなかった。一方、変形性股関節症患者の歩行速度は、股関節機能ではなく腰椎アライメントおよび膝関節伸展筋力に関連し、大腿骨頭壊死症患者の歩行速度は、股関節機能や腰椎骨盤アライメントおよび下肢筋力と関連性を認めなかった。このことから、変性性股関節患者の歩行能力の改善するためには、股関節機能ばかりでなく全身的な視点から運動機能を評価することが重要であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】股関節疾患により歩行能力の低下をきたした患者では、原因疾患により歩行能力の低下の要因が大きく異なる可能性があることが示唆された。さらに、変形性股関節症患者では、股関節機能のみならず腰椎アライメントや膝関節伸展筋力など全身的な視点からの股関節疾患の障害像を捉えた上で、理学療法を展開することの重要性が示された意義ある研究であると考える。
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© 2010 日本理学療法士協会
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