理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: Sh2-018
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主題演題
急性期病院における全科に対応した廃用症候群患者の取り組み
病棟とのリハビリカンファレンスの有効性について
竹内 新治稲川 利光澤田 義則山本 泰治藤原 弥生茂垣 美加荒木 聡子室井 真樹中村 沙織畠 絢子小田 陽子佐々木 雄輔瀧澤 彰宏江原 弘之佐藤 一成
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抄録
【目的】
当院は606床の急性期病院であり、平均在院日数12.2日(2005年)と入院期間の短縮化に努めている一方、病状の増悪、低栄養、術後の合併症などによりADLが低下した廃用症候群患者の平均在院日数は76日(2007年)と長期に及んでいる。看護部が入院患者の廃用症候群予防を2007年の取り組みとして掲げ、我々理学療法士も全面的に協力した。全病棟看護師の各代表とリハビリテーション科(当科)で話し合いが持たれ、廃用予防における知識向上や早期離床・動作能力(出来る動作としている動作)などの双方の情報交換が必要であるとの意見が多くみられた。2008年度より理学療法士の増員を機に、廃用予防の主たる取り組みとして、全病棟と対象にリハビリカンファレンス(病棟カンファ)を実施した。理学療法士が各病棟との連絡係となり、週1回程度の病棟カンファに参加し情報交換をしている。病棟カンファの参加者は主に病棟の看護師・理学療法士であり、医師やソーシャルワーカーが参加している病棟もある。内容としては、PTに依頼予定の患者紹介、PT介入が必要かどうかの相談、PT実施患者の病状や出来る動作としている動作の確認、介助方法についての助言、退院・転院などの方向性等である。今回、病棟カンファを実施したことによる廃用症候群患者へのPTの関わり方・ADL変化・入院期間の変化など、有効性について検討した。
【方法】
当科の連携科である脳外科・脳卒中科・神経内科・整形外科疾患以外の、病状の悪化や術後の合併症などによりADLが低下した患者を廃用症候群としている。2008年度より定期的に病棟カンファを開催した病棟と対象とし、2008年度におけるPT実施患者を実施群とし、前年である2007年度のPT実施患者を実施前(群)として比較した。比較の内容は、PT患者数、平均入院期間、入院からPT開始までの経過日数(開始日数)、PT実施期間、PT開始時と終了時のADL(Barthel Index以下BI)、自宅退院の割合とした。PT実施期間・ADL・自宅退院の割合は死亡退院を除く患者で比較した。
【説明と同意】
当研究は、ヘルシンキ宣言に則り、対象となる患者の生命・健康・プライバシー・尊厳を守った方法で行なっている。
【結果】
PT患者数は実施前462名(74±12歳)、実施群561名(75±12歳)と21%増加した。入院期間は実施前58日、実施群44日と短縮した(P<0.01)。開始日数は実施前16日、実施群13日と短縮した(P<0.01)。PT実施期間は実施前36日、実施群28日と短縮した(P<0.01)。ADLは実施前でPT開始時44点、終了時62点、実施群はPT開始時46点、終了時64点とともに終了時に点数が増加したが両者における有意差は認められなかった。自宅退院の割合は実施前59%、実施群65%であった(オッズ比1.19)。
【考察】
PT患者数の増加とPT開始までの日数の短縮は、病棟カンファにおいて各患者のPTの必要度について意見交換しやすい状況となり、医師・看護師が当科に依頼しやすくなったことが要因の一つと考えられる。入院期間の短縮は病状の回復によるものが考えられるが、PT開始の早期化や自宅退院と転院の方向性の決定が早まっている可能性も考えられる。ADLはBIの差はないが、PT実施期間の短縮が認められ早期にADLが高まっていることが示唆される。
【理学療法学研究としての意義】
急性期病院の当院では専門的な治療とともに早期離床を図ることが必要である。多職種との密な情報交換が廃用症候群を防ぐ一手段として有効と考え、理学療法士が各病棟に出向いてカンファレンスを実施することで多職種連携を強化した。病棟カンファの実施は、廃用症候群に対するPT適応の拡大・早期対応、生活動作改善、入院期間の短縮などに貢献できたことで有用であったと考える。
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© 2010 日本理学療法士協会
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