理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O2-179
会議情報

一般演題(口述)
同種造血幹細胞移植患者の健康関連QOLについての検討
木口 大輔林 美里田内 秀樹鴻上 繁小橋 澄子宮崎 幸大中瀬 浩一名和 由一郎原 雅道
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】近年、悪性腫瘍治療は治癒を目標とするだけでなく、治療後の Quality of life(QOL)も考慮した治療が重要視されている。今回我々は造血器腫瘍患者に対する同種造血幹細胞移植(allogeneic stem cell transplantation:allo-SCT)後の健康関連QOLについて、移植後経過年数および慢性移植片対宿主病(chronic graft-versus-host disease:cGVHD)の影響について検討したので報告する。
【方法】対象は当院でallo-SCTが施行された119例とし、2009年6月に郵送、自己記入方式による質問紙調査を行った。このうち回収され記載上の不備を除いた68例(有効回収率57.1%)、男性38例、女性30例、年齢22~75歳(中央値44歳)、移植後経過年数0.4~20.0年(中央値6.6年)について分析を行った。質問紙調査はSF-36(MOS 36-Item Short-Form Health Survey)を使用し、下位尺度とサマリースコアを国民標準値50点、標準偏差10点とした国民標準値に基づいた変換得点で算出した。移植後経過年数とQOLについて、移植後経過年数別の下位尺度と国民標準値を比較検討し、統計解析は1標本t検定を使用した。また、移植後3年未満症例のcGVHDとQOLについて、サマリースコアとcGVHD重症度を比較検討し、統計解析は一元配置分散分析とScheffe法による多重比較検定を使用した。有意水準は5%で有意差ありと判定した。
【説明と同意】対象者には研究の趣旨を説明し書面にて同意を得た。
【結果】移植後経過年数別の下位尺度と国民標準値の検討は、移植後3年未満(19例)では、身体機能(PF)41.2±16.5点、日常役割機能‐身体(RP)33.6±17.8点、体の痛み(BP)46.6±12.1点、全体的健康感(GH)44.6±10.0点、活力(VT)46.5±12.3点、社会生活機能(SF)38.4±16.7点、日常役割機能‐精神(RE)39.6±16.5点、心の健康(MH)46.7±12.5点であり、PF(p=.033)、RP(p=.001)、GH(p=.029)、SF(p=.007)、RE(p=.013)に有意な低下を認めた。移植後3年以上(49例)では、PF49.0±11.0点、RP47.9±13.0点、BP52.1±10.8点、GH47.3±11.9点、VT51.9±10.4点、SF49.7±12.9点、RE50.0±10.9点、MH51.7±8.9点であり、各下位尺度で有意な差は認めなかった。サマリースコアとcGVHD重症度の検討は、身体的健康サマリースコアでは、なし群45.5±10.6点、軽症群34.5±14.3点、中等症群24.6±15.7点で、なし群と中等症群の間に有意な差(p=.036)を認めた。精神的健康サマリースコアでは、なし群52.5±11.1点、軽症群47.8±13.9点、中等症群47.1±11.3点で各重症度の間に有意な差は認めなかった。
【考察】悪性腫瘍の治療 にはQOLが重要視されており、QOL低下予防のためには運動機能の維持、改善が必要であると考えられている。今回の研究では、移植後3年未満者の健康関連QOLは国民標準値と比べて有意に低下しているが、移植後3年以上の生存者は国民標準値と差を認めない程度まで改善していることが明らかにされた。また、移植後3年未満者における健康関連QOLの低下については、cGVHD重症度により身体的健康サマリースコアの差を認め、cGVHDが身体的健康度に影響を及ぼしている可能性が示唆された。したがって移植後3年未満者の健康関連QOLの向上には、cGVHDによる身体機能低下の予防と改善が重要であると考えられた。【理学療法学研究としての意義】高齢化社会に伴い悪性腫瘍患者は増加していくと推定されている。よって、理学療法士は患者のQOL維持向上のため今後さらに介入していく必要があり、本研究は理学療法学研究として重要であると考える。
著者関連情報
© 2010 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top