理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O2-185
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一般演題(口述)
心疾患患者の6分間歩行試験前後の呼吸筋および下肢筋持久性と運動耐容能との関係
田屋 雅信熊丸 めぐみ風間 寛子西川 淳一設楽 達則中野 晴恵猪熊 正美高橋 哲也臼田 滋村上 淳安達 仁大島 茂谷口 興一
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抄録
【目的】
近年,心疾患患者では中枢となる心臓だけでなく,末梢骨格筋が注目されている.特に下肢筋力(膝伸展筋力や膝屈曲筋力)と全身持久力の指標となる運動耐容能との関係については報告が散見され,下肢筋力が運動耐容能を反映していることがいわれている.また,慢性心不全患者では呼吸筋力の低下が運動耐容能の低下と関連しているという報告もなされている.しかし,これらの報告では瞬発的に発揮される末梢骨格筋の筋力を指標としており,心疾患患者の筋持久力に関する報告はない.本研究では心疾患患者を対象に末梢骨格筋(呼吸筋力,下肢筋力)の持久性と運動耐容能との関連について検討することを目的とした.
【方法】
対象はリハビリテーション依頼のあった心疾患患者40名(平均年齢64.3(45-82)歳,男性28名,女性12名)とした.疾患の内訳は,慢性心不全14名(CHF群;平均年齢62.9(45-81)歳),心臓外科手術後12名(CS群;平均年齢62.1(51-75)歳),虚血性心疾患14名(IHD群;平均年齢67.5(54-82)歳)であった.リハビリテーション開始前に心肺運動負荷試験(CPET)を実施し,peak VO2などの各種呼気ガス指標を測定した.リハビリテーション開始後1ヵ月以内に6分間歩行試験(6MWT)を施行し,6分間歩行距離(6MWD)を測定した.6MWT前後で呼吸筋力および膝伸展筋力を測定した.呼吸筋力はCHEST社製呼吸筋力計を用いて最大吸気圧(MIP),最大呼気圧(MEP)を測定した.膝伸展筋力は等速性筋力測定装置(BIODEX)を用いて測定し,膝関節90°屈曲位での等尺性収縮による最大膝伸展トルクを体重で除した体重比(peak torque/BW:%)を算出した.6MWT前後のMIP,MEP変化率(6MWT後/前×100:%)を呼吸筋持久性,膝伸展筋力の変化率(6MWT後/前×100:%)を下肢筋持久性の指標とし,運動耐容能の指標である6MWD,peak VO2との関連や呼吸筋力,膝伸展筋力との関連をピアソンの相関係数を用いて検討した.また,6MWT前後でのMIP,MEP,膝伸展筋力を対応のあるt検定で比較検討した.
さらに,CHF群,CS群,IHD群の3群それぞれでMIP変化率,MEP変化率と6MWD,peak VO2との関連をピアソンの相関係数を用いて検討した.
患者背景として,LVEF,NYHA,発症からの経過日数などをカルテより調査した.
【説明と同意】
本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得て実施した.研究実施の際には本研究の趣旨を書面にて患者に説明し同意を得て行った.
【結果】
6MWT後のMEPは有意に低下を認め,MIPも低下傾向(p=0.08)を認めた.6MWT前後のMIP変化率は94.5±14.5%,MEP変化率は92.0±21.3%,膝伸展筋力の変化率は99.7±8.8%であった.MIP変化率と6MWDは有意な正の相関関係(r=0.45,p<0.01)を示したが,peak VO2とは相関関係を認めなかった.一方,MEP変化率では6MWDと相関関係を認めず,peak VO2と有意な負の相関関係(r=-0.33,p<0.05)を認めた.膝伸展筋力の変化率は6MWD,peak VO2ともに相関関係を認めなかった.また,MIP変化率と末梢骨格筋の筋力との関係では,MEP(r=0.39,p<0.05),膝伸展筋力(r=0.33,p<0.05)と有意な正の相関関係を認めた.MEP変化率ではMIPと負の相関関係(r=-0.31,p<0.05)を認めた.
疾患別の検討では,3群間でMIP変化率,MEP変化率に有意差を認めなかった.また,CS群でMIP変化率と6MWDとの正の相関関係(r=0.71,p<0.01)を認め,CHF群では有意な相関関係を認めなかった(r=0.35,p=0.21).一方,各疾患別のMEP変化率は6MWDとの相関関係を認めなかった.
【考察】
心疾患患者では,6MWT時の吸気筋持久性(MIP変化率)が6MWDを規定する因子の一つになりうる可能性が示唆された.特に心臓外科手術後は胸骨正中切開創の影響もあり,呼吸筋力の低下や呼吸筋持久性の低下が考えられた.一方,慢性心不全患者では吸気筋力自体の低下や運動後に吸気筋力が低下するほど運動耐容能が低下しているとの報告もあるが,本研究では吸気筋持久性(MIP変化率)と運動耐容能との関連が認められなかった.
【理学療法学研究としての意義】
今回,6MWT前後での呼吸筋力および膝伸展筋力を測定し,末梢骨格筋の持久性と運動耐容能との関係を検討した結果,吸気筋持久性も6MWDを規定する因子である可能性が示唆された.今後は心疾患別に末梢骨格筋の持久性について検証していきたい.
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© 2010 日本理学療法士協会
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