理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O2-184
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一般演題(口述)
近赤外線分光法による持久的運動と間歇的運動の末梢循環効果比較
花田 智関根 正樹田村 俊世新地 友和福永 誠司湯地 忠彦東 祐二藤元 登四郎
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抄録
【目的】米国心肺リハビリテーション協会では,運動療法の高リスク群において,連続的に運動継続が困難な場合は間歇的運動を採用して運動時間の延長を図る事が望ましいとしている.この運動の安全性や効果について,運動負荷中の血圧応答など中枢性効果は確認されているが,末梢循環等の報告は見当たらなかった.そこで,我々は第44回本学会において,間歇的運動における末梢循環効果を近赤外線分光法(以下NIRS)にて検討し,間歇的運動においても末梢効果を認める事を報告した.今回は,持久的運動と間歇的運動において末梢効果に差異が生じるかどうかを検討することを目的とし,実施した.
【方法】対象は,循環器や整形外科疾患を有さない健常女性6名(年齢:24±4.2歳・身長:156±4.3cm・体重50.9±9.3kg)であった.運動負荷量(以下:負荷値)の設定は,運動負荷試験を実施し,最大予測心拍数の50%到達時の負荷とした.運動方法は,自転車エルゴメータを用いて,持久的運動は負荷値で10分間の運動を,間歇的運動では負荷値と休息とを10分間30秒サイクルで実施した.尚,運動の前後5分間はエルゴメータ上座位にて測定下肢を下垂した状態にて安静とした.血行動態評価は,大腿外側広筋(膝上10〜12cm)に対し非侵襲性ハンディ酸素モニタ(HEO-200:omron)を装着し,総ヘモグロビン量(以下tHb)を指標とした.その他,リスク管理を目的として血圧・脈拍を2分間隔で測定した.運動負荷試験,ならびに各運動間はそれぞれ1日以上の間隔を空けて実施した.統計処理は,各運動開始直前1分間の平均値(以下安静値)を100%とし,最終安静終了直前1分間の平均値(以下終了値)値を相対的に変換した変化率(%)を求めた上で,両運動間での変化率を対応のあるt検定(P<0.05;両側検定)にて行った.
【説明と同意】本研究は,当法人倫理委員会の承認を得た後に,対象者へ研究の説明を行い、同意の署名を頂き実施した.
【結果】エルゴメータの平均負荷値は,40±8.05wattであった.終了値における持久的,間歇的運動のそれぞれの平均変化率は102.16±1.43%,101.25±0.94%となり,持久的運動が間歇的運動と比較して高い変化率を示したが,両運動間に有意差は認めなかった.血圧等に関しては,運動療法の中止基準に該当する対象者は認めず,全員リタイアすることなく実施できた.
【考察】今回,両者間を比較しtHbはそれぞれ増加したものの,変化率には有意差を認めないという結果になった. まず,tHbの増加は反応性充血によるものと考えた.筋血流量は、最大随意収縮(以下MVC)の20%前後から血流阻止が生じ、圧迫においても負荷の上昇に伴い上昇する.本研究の負荷量は,20%MVC以上にて実施した為,運動が筋内圧上昇を招き,血流阻止が少なからず生じた可能性がある.それにより、両運動とも終了と同時に反応性充血を生じ、tHbが増加したものと考えた。変化率に関して,本研究では両運動とも同負荷にて行っており,筋内圧から血管にかかる圧力は同じであるため,血管弾性エネルギーによる復元力に大きな差は認めない.その結果,反応性充血によって生じる血管拡張に有意差を認めなかったのではないか考えた.事前研究において,両運動ともそれぞれ実施後に有意に血管拡張を認め,そして今回,両運動間の変化率の比較において有意差を認めなかった.このことより,両運動ともに同様の血管コンダクタンスの改善が得られており,それが血管抵抗減少を招いている可能性があるなど,末梢循環効果を得ている事が示唆された.今後は,さらに対象者数を増やすことや,運動と休息時間の割合,局所性血管拡張物質や交感神経などの影響も含め継続研究を行う必要があると思われる.
【理学療法学研究としての意義】本研究は,持久的運動と間歇的運動が末梢効果に与える影響の差異をみたものである.今回の方法においては,間歇的運動が持久的運動と同様の末梢効果を得る事が示唆された.この結果は,運動種目の選択肢の増加,理学療法の実施患者拡大に繋がってくるのではないかと考える.今後は循環器疾患患者においても実施する予定であり,本研究が基礎研究から臨床研究へと繋がるものと考える.
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© 2010 日本理学療法士協会
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